控え野球女子に「全力出し切って」 競技継続へ受け皿を…実戦で学ぶ“期間限定”チーム

毎年10月に結成…「北九州ガールズ」は実戦を通して小学生女子に野球の楽しさを伝える
女子選手の競技人口拡大へ、一役買う“期間限定”チームが福岡にある。北九州市軟式野球連盟に所属する「北九州ガールズ」だ。同市内の学童チームに所属する女子選手から希望者を募り、毎年10月頃に結成。日頃出場に恵まれない子たちにも実戦の機会を作ろうと、主要大会が減る季節限定で2014年に発足した。11年目となる2024年度チームは2年生から6年生まで、計35人の選手が集結。就任3年目の村上直孝監督(徳力パワーズ監督)に話を聞いた。
「女性なので、ワクワクするようなチームにして、キラキラ輝こうと伝えています。昔の少年野球の監督のようにワーワーいうつもりもないですし、あの子たちの自己主張を全部受け止めてあげたいなと思っています」
鮮やかなブルーとピンクで彩られたユニホームが一際目を引く。合い言葉は「男子に負けるな」。所属チームでは男子の控えに甘んじていても、北九州ガールズでは試合に集まった選手全員の起用が基本方針で、実戦の中で野球の楽しさを学ぶことができる。2月に行われた「愛球会FINAL学童軟式野球大会」では、男子チームに交ざり出場。3点を追う最終回に一挙4点を奪い、6-5のサヨナラ勝ちで見事に初戦を突破した。
「選手からは春ぐらいの段階から“今年はいつからチームを結成するんですか?” と言われたりします。最後に負けたとしても、全力を出し切ってよかった、楽しかったって言えるようなチームを目指しています」

今年4月には沖学園高が福岡で2校目となる女子野球部を創部
運営や指導には難しさもある。1つは選手集め。所属チームの日程が優先されるため、週末のやり繰りには頭を悩ませる。「愛球会FINAL」も、主力の数選手が卒団式のため欠席。2回戦では6点リードを守れずサヨナラ負けで今年度の活動を終えた。
「必ず集まってくれるということはないので、もどかしさは凄くあります。試合の1週間前ぐらいに佐藤(慎也)コーチに連絡ノートを作っていただいて、誰が来られるから、どこを守らせようという形でやっています」
そしてもう1つ。普段の所属チームでは物静かでも、同性のみのチームになると開放感もあってか、北九州ガールズでは「凄く元気になる」選手も多いという。もちろん、試合でいい方向に作用することもあるが、指導者の言葉を聞かなくなるケースもあるという。
「昨年の佐賀遠征で、全力疾走しない、テキパキ動かない、挨拶しないということがありまして、3年目で初めて厳しく注意したことがありました。私もお父さん世代ですから、彼女たちをどこに出しても恥ずかしくないよう、しっかりと育てています」
ただ、小学生のうちに女子野球の楽しさに触れても、中学では受け皿がないのが現状だ。多くは軟式部活や硬式クラブチームに進んで野球を継続するが、どうして男子とは体格差が開くため、試合に出ることは難しくなる。高校は強豪の折尾愛真高に加え、今年4月には沖学園高が福岡で2校目となる女子野球部を創部。中学でも女子チーム結成の動きが広まれば、選択肢が広がり、さらなる競技人口拡大が見込まれる。
「将来的には北九州ガールズを巣立った子が指導者になったり、その子どもが入ってくれたりしたら嬉しいですね」
わずか半年足らずの活動かもしれないが、北九州ガールズが女子野球界にもたらす功績は、非常に大きい。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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