飛ぶバット禁止で「昔の野球しないと」 130発打線が一転…得点に迫る“チャンス3回”

昨年「くら寿司トーナメント」出場の強豪・木屋瀬バンブーズは勝負どころで“スモール徹底”
小学生軟式野球では今年から、反発力を高めるウレタン素材などを配した一般用(大人用)の複合バットの使用が全面禁止となった。それに伴い、これまでの戦略を変更するチームは多いだろう。昨年末、神宮球場で開催された、全国の約1500の学童野球チームが頂点を争う「くら寿司トーナメントポップアスリートカップ2024」に、九州地区代表として出場した「木屋瀬バンブーズ」(福岡県北九州市)もその1つだ。
これまでは「もう打つだけ」で、面白いように点が入った。一昨年のチームは通算134本塁打で、5割打者が2人。14大会で優勝すると、昨年のチームは「くら寿司トーナメント」で2008年以来となる全国の舞台を経験。強打で圧倒的な戦績を残してきた。
活動は土日祝日に限るため、特別な打撃指導はない。指導歴32年を誇る中川芳生監督は「家では100回も200回もバットを振らなくていいから、50回だけはちゃんと振る」ことを選手たちに指示。週末には「やっている子とやっていない子の差がはっきりとわかる」という。
ただ、高反発バットの使用禁止で、攻め方は大幅に変わった。1死三塁のケースでは、これまでなら強振一辺倒だったのが、ゴロ打ちの徹底を指示。時にはエンドランをかけるなど、1点を奪いにいく意識を選手たちに植え付けている。
「打球も飛ばなくなるので、今は、昔の野球のようにしないといけないですよね。フライなら捕られて終わりですが、ゴロならば捕球する、一塁へ送球する、そして一塁手が捕る、という3つのプレーが入るので、いわば相手のミスで出塁するチャンスが3回あります。塁に出たら“送る・走らせる”、または“走らせる・送る”で1死三塁の形を作り、そこで高い(バウンドの)内野ゴロを打てば、ノーヒットでも1点が取れます」

投手陣は直球の質に重点「小手先のスローボールは厳禁」
野手陣にスモール野球を浸透させる一方で、投手陣は大らかに育成している。ブルペン投球ではなく、実戦の中で球数を投げさせることで、打者への対応力を養わせる。小手先に頼るスローボールを投げることも禁じ、直球の質を磨くことに重点を置いて、中学や高校でも通用する投手に成長させることが目的だ。
「平日は練習がないので、公園で友達とキャッチボールをする程度です。今年は打力ではなく、投手力と守備力でいけるんじゃないかとは思っています」
1974年の創部から50年が経過した歴史あるチームは、新年度から4年生以下を2チームに分けることも検討中。より実戦機会を与えることで、競争心をあおっている。
「ウチは3年生でもうまかったらAチームに上げて起用します。昨年4年生でレギュラーだった子も、3年生から三塁で使っていました。そこは競争なので、保護者にも納得してもらった上で使っています」
伝統にとらわれず、硬軟自在の野球スタイルを取り入れているからこそ、木屋瀬バンブーズは結果を残し続けることができる。
(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
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