「下手そう」なのに超重要…小学生で“カナメ”の守備位置は? 全国V2に学ぶゴロ捕球

全国連覇の堅守・新家スターズ…少年野球指導に生かせるゴロ捕球のコツ
小学生野球で守備位置を決めていく際に、重要になる“ポジション”があるという。2024年夏の「全日本学童野球大会マクドナルド・トーナメント」で連覇を果たした学童野球の強豪・新家スターズ(大阪府泉南市)は、小学4年生以下のジュニアチームの段階から、武器である守備・走塁への意識を徐々に植え付けている。中学年・低学年にどんな守りの指導をしているのか。ゴロ捕球のコツが身に付く練習法を取材した。
マクドナルド・トーナメントで史上3チーム目の連覇を果たした新家スターズの強さといえば、1死三塁を形作って得点に繋げる隙のない走塁と、1点を守り切る守備力。昨夏の同大会決勝では豪雨の中でも動じない堅守ぶりが印象的だったし、12月の学童全国大会「くら寿司トーナメント」も、ロースコアの接戦をものにする強さが光り決勝まで駒を進めた。
低学年への守備練習にも工夫が凝らされている。取材日に行っていたのは、ゴロ捕球の際のスピードの切り替えを意識したメニュー。もも上げを大きく10回→小さく10回を2セット繰り返した後に前進し、転がってきたボールを捕球・返球する。続いて、引かれた白線に沿って前進して小さく足踏み→指定したラインに左足を置いて捕球・返球をする、という練習も行った。
低学年のコーチを務める貴志款八さんは、「ゴロ捕球の際にスピードを緩められず、そのまま突っ込んで弾いてしまう子が多いです。もも上げを入れて、体の切り替えを覚えさせる目的で行っています」と説明する。この年代ではフライ捕球が苦手な子も多いが、まずはマシンで上げたボールを捕らずに体の前に落とさせる(後逸を防ぐ)、次にヘルメットを被ってヘディングをさせる、など段階を踏んで教えていくという。
一方で初心者の子へは、まずは“楽しく”だ。小さい子はグラブをはめると、面を上に向けて“入れ物感覚”でボールを捕ろうとしてしまう。そこでキャッチボールでも、落としてもOKなので、面を投げ手の方に向けることを意識させる。指導する佐藤信行さんは、「まだ手が小さくてボールをつかめませんから、遊び感覚で楽しくできるように教えています。“また来たい”と言ってもらえるのが一番嬉しいですね」と語る。

右翼・二塁を兼任する位置で“ライトゴロ狙い”
「連覇したチームも、ジュニアの時から守備の基礎は徹底して教えていました。この年代でも、守備を作れたらそれなりに野球の形にはなっていきますね」と貴志さん。では、試合をする際には、どのようにポジションを決めていくのだろうか。
ジュニアチームの監督を務める西口正人さんは、「投手と捕手、一塁、三塁ができる子がいると、ある程度は形になります」と語る。ストライクを投げられなければ試合にならず、バッテリーが重要なのは当然のこと。また、一塁でしっかり捕球できる子がいなければアウトが取れない。
内野の要(かなめ)になるのは三塁手だ。投手右横へ来るゴロは弱ければ投手が、強めならば三塁手がさばく。守備の花形といえば遊撃手のイメージだが、学童の早い段階では三塁手に守備力の高い子を優先することで、三遊間をカバーできる。
加えてもう1つ、重要視するのが右翼手だ。「ライト兄弟、守備下手そう」というお笑いネタもあるように、守りが不得手な選手が就くイメージは昔から根強いが、グラウンドサイズの小さい学童野球では特に、レベルが高くなるほど重要なポジションになる。
「学童ではライトゴロが狙えますから、二塁手は二塁ベース寄りに就かせて、右翼手が二塁も兼任するような形で守らせます。投手がそこそこ速い球を投げられれば、ライト方向に打球が飛ぶことも増えますし、重要視しているポジションですね」(西口さん)
学童野球では今年から一般用の高反発バットの使用が禁止になり、勝ち上がるためにはますます守備力の重要度が増してくる。下の年代からの基礎徹底が、上のレベルでの飛躍につながっていく。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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