「手を先に出せ」に潜む打撃の誤解 鷹新コーチ伝授…ゴロ量産を防ぐ“上手の向き”

手首矯正ドリルを紹介する菊池タクト氏【写真:内田勝治】
手首矯正ドリルを紹介する菊池タクト氏【写真:内田勝治】

ソフトバンクでスキルコーチ・菊池タクト氏が打撃時の手首矯正ドリルを紹介

 素振りや打撃練習などで「手を先に出して打て」と教えられたことはないだろうか。手は体の近くの最短距離を通し、バットのヘッドは遅らせるということだが、勘違いをして手と一緒にバットも出し、スイングが遠回りしてしまう選手は多い。米国でコーチングを学び、今年からソフトバンクでスキルコーチを務める菊池タクトさんは、「外野へ打球を落とすことが安打になる確率を上げますが、それだとヘッドが返ってゴロになるケースがほとんどです」と強調する。

「外野に打球を飛ばすには、トップハンド(バットを握って構えた際に上にくる手、右打者ならば右手)の使い方、動かし方が打球角度を作る上で重要になります。ゴロになる原因は、このトップハンドの動きにあります」

 手を最短距離で先に出しつつ、バットのヘッドは後ろから遠回りさせる。そして、インパクト後も手首を返す(コネる)動作が入らず、トップハンドの手のひらが常に上を向いている「パームアップ」の状態を長く保つ。この2つができて、初めて角度がついた勢いのある打球が飛ぶ。

 このスイングを身に付けるために菊池さんが推奨するのが「スイングアウト」ドリル、別名「回外ドリル」だ。回外とは肘から手首の前腕部分を、手のひらが上を向くように捻ることをいう。

 まず、体の前で、トップハンドでバットを短く持ち、肩の高さまで肘を上げる。肘の角度を90度にし、バットを水平にすると、ちょうど、やり投げをするような体勢なる。そこから前腕を、親指が外側に来るまで回外させて、繰り返し振っていく。バットのヘッドとグリップの高さを水平に保ったまま振るのがポイントだ。

 慣れてきたら片膝立ちになり、同じ振り方をして、置きティーで実際にボールを打ってみる。常にバットの芯でボールを捉えることと、打ち終わりに、パームアップの状態がキープされていることが重要だ。

「バットを短く持ってこのドリルをすると、グリップが自分の顔に戻ってきます。これをよけるように体を後ろに反らせた体勢が、手や上体が前に突っ込んでいない、実際のインパクト時の理想の体勢と考えてください」

現在ソフトバンクでコーチを務める菊池氏【写真:竹村岳】
現在ソフトバンクでコーチを務める菊池氏【写真:竹村岳】

胸の回転主導でのスイングが身に付く「オープンスタンスドリル」

 振り出しを先導する役目を担うボトムハンド(バットを握って構えた際に下にくる手、右打者ならば左手)も重要だ。「手を先に出す」とはいえ、実際には、胸を投手方向へ素早く回転させる動作に、ボトムハンドのリードが加わって自然に手が出て行くのが正解になる。この意識づけのために、菊池コーチが推奨するのが「オープンスタンス・ヒッティングドリル」だ。

 まずはティースタンドを肩の高さに設置し、ボトムハンドで短くバットを持って、打つ方向に正対して構える。そこから捕手方向に一度体を捻り、胸をグッと前に回転させて打つ。フィニッシュ時に、グリップと肘をしっかりと肩の高さまで上げることがポイントだ。慣れてきたら両手で行い、トップハンドとボトムハンドの動きをしっかりと連動させていく。

「NGパターンは、胸を回す前にボトムハンドから先にボールに向かっていき、打った後にグリップが背中の方まで回ってしまうこと。胸主導で回していくことで、グリップはしっかり体の前で収まります。これがいい形です」

「手を先に出せ」とは、手もバットも最短距離で出すことではない。手は体の近くを最短距離で、バットのヘッドは最長距離を通す。それが、打球は遠くへ飛ばすことにつながる。理論をアップデートすることは、選手も指導者も大切だ。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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