父は作曲家…ピアノ奏でる93kg巨漢4番 応援歌にも“こだわり”「雰囲気に合う」

西日本短大付・佐藤、確信の高校通算9号
第97回選抜高校野球大会は24日、大会第7日が行われ、第2試合は西日本短大付(福岡)が山梨学院(山梨)と対戦。4回に4番・佐藤仁内野手(3年)が大会5号となる左越え2ランを放つなど打線が11点を奪って快勝した。
甲子園に響くドボルザークの交響曲第9番「新世界より」。重厚な音色に乗って、大きな一発が飛び出した。6-2で迎えた4回1死二塁。内角寄りの直球を捉えた佐藤の打球は、左翼ポール際を楽々と越えていった。インサイドアウトのスイング効果で切れずにスタンドイン。「打った瞬間、入ったと思いました。そんなに強振せず、いい力感で打てました」。
父・五魚(ごう)さんは、男性ボーカルグループ「ゴスペラーズ」のツアーでキーボードを担当したこともある作曲家。佐藤もピアノを3歳から11歳まで習った。寮にはキーボードを持ち込みジャズなどを弾いて過ごすこともある。試合前にはクラシック音楽を聴いてリラックスするのがルーティン。打席での「新世界より」は「迫力がある曲で、自分の雰囲気に合う」と吹奏楽部にリクエストしたものだ。
180センチ、93キロの恵まれた体から飛び出した高校通算9号。「ずっと憧れていた場所。甲子園でホームランを打つのは特別な思いです。うれしい気持ちでいっぱいになって気持ちが高ぶってしまいました」。思わずバットを放り投げ、ガッツポーズしたことを反省しつつ「4番の仕事はできたと思う」と胸を張った。
持ち味のパワーに確実性を加えるため、普段は木製バットを使って練習する。「木だと芯に当たらないと飛ばない。捉えるのがうまくなってきた感覚はあります」。フルスイングを心がける主砲は、量より質にこだわり、冬場は全力で連日200〜300回、振り込んできた。その成果を大舞台で十分に示している。
会心の柵越えでクリーンアップそろい踏み
この試合は初回に5番・安田悠月外野手(3年)が先制のランニング3ラン。大垣日大(岐阜)との1回戦では、3番・斉藤大将外野手(3年)が7回に左中間にランニング本塁打を放っており「ランニングホームランが2本なんて、そんなにないこと。珍しいと思った」。確かに同一チームの2試合連続ランニング本塁打は、めったにない記録だ。
しかも前後を打つ打者がマークしたとあって、自然と意識してしまう。「走るのは苦手なので……」と自身はしっかり柵越えで悠々とダイヤモンドを一周し、クリーンアップの本塁打そろい踏みを達成した。1回戦では左翼フェンス直撃の三塁打など長打2本も惜しくも逃したアーチの感触は格別。「ホッとした部分もあります」と笑みを浮かべた。
低反発バットが導入された昨年は本塁打がランニング本塁打1本を含む3本と激減。今大会もそこまで多くないものの、ここまでの5本塁打中、西日本短大付だけで3本を記録している。屈指の強打で昨夏を超えるベスト8進出。準々決勝は昨秋の明治神宮大会の覇者・横浜(神奈川)と激突する。
夏は1992年に優勝しているが、春は初勝利を挙げた今大会が2度目の出場。佐藤は「目標の全国制覇のためには、横浜は倒さないといけない相手。粘り強く戦いたい」と臆せず言い切った。豪快な打撃で、再び勝利のハーモニーを奏でてみせる。
(尾辻剛 / Go Otsuji)
