軟式→硬式の“移行期”で「怪我の割合高い」 大阪桐蔭元主将が勧める負担減練習

怪我を予防しながら硬式球に慣れる方法とは…水本弦氏が新中学1年生にアドバイス
これまで軟式でプレーし、新年度から新たに「硬式球」に触れる野球選手は、どのようなことに注意をすればいいのだろうか。大阪桐蔭の元主将で、現在は名古屋市で野球塾を運営する水本弦氏が、軟式から硬式に移る中学1年生に向けた投打のアドバイスを送る。故障に細心の注意を払いながら、焦らず、数か月かけて慣れていくのが一番のポイントだ。
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新年度が始まり、小学生から中学生、中学生から高校生と野球のカテゴリーが上がった選手もいます。軟式球から硬式球に替わる選手も少なくないと思います。今回は、主に硬式球に初めて触れる新中学1年生に向けた注意点や、硬式球に対応するための練習法をお伝えします。もちろん、新中学1年生以外の選手も、パフォーマンスアップにつながるメニューです。
硬式球は小学生が使う軟式球のJ号と比べて15グラムほど重くなります。この15グラムの差が想像以上に大きいのです。特に、まだ成長過程の中学生にとっては体への負担が小さくありません。
まず、中学生になって初めて硬式でプレーする選手は、投球や送球を繊細にやっていく必要があります。肩や肘の故障につながってしまうためです。私が名古屋市で運営している野球塾では打撃に重点を置いて指導しているため、肩や肘を悪くする選手はいませんが、所属しているチームの練習で痛めてくるケースが多いです。特に、中学1年の夏までに怪我をする選手の割合が高いと感じています。
ただ、怪我は避けなければいけませんが、硬式球には慣れる必要があります。そこで、私が勧めているのは「短い距離で数多く投げる」練習です。塁間の半分ほどの距離で、スナップスローくらいの力でキャッチボールをします。強度を抑えて肩や肘への負担を小さくし、同時に硬式球の重さを体で覚えられます。力を入れて投げる場合は球数を少なくします。
硬式球の感覚を早くつかみたい気持ちから、選手はオーバーペースになりがちです。また、球が重くなった分、力いっぱい投げようとする傾向もあります。小学生の時から硬式でプレーしていたチームメートがいると焦ってしまうかもしれませんが、数か月で慣れてくるので心配いりません。それよりも、怪我を防ぐ練習や正しいフォームを心掛けてください。体が開いたり、頭が前に突っ込んだりした投げ方をすると肩や肘に負担がかかるので、力まずに投げる意識が大切です。

手の痛みを避けるクセをつけない、インパクトを強化するメニュー
打撃の面では軟式から硬式に替わると、衝撃が強くなります。手に痛みを感じるため、バットとボールが当たるインパクトの瞬間に力を抜いたり、片手を離したりする選手がいます。片手を離す動きは将来的に必要になる技術ですが、硬式球で練習を始めたばかりの選手には必要ありません。痛みには少しずつ慣れてくるので、最初は少し我慢をしてインパクトの瞬間にしっかりと力を入れないと悪いクセがついてしまいます。
私たちの野球塾ではインパクトの強さを高める練習の1つに、バットを振り戻すメニューを取り入れています。素振りやティー打撃でスイングをしたら、勢いよくバットを構えた位置に戻します。バットを強く速く戻す意識を持つと、スイングが自然と強くなります。バットを戻す時にリストを使うので、手首も強化されます。シンプルな内容ですが、硬式球に移行したばかりの選手には効果的な練習メニューです。
硬式用のバットは軟式用よりも長くなり、重さも増します。バットを操作できないとフォームが崩れやすくなるので、はじめはバットを短く持ってスイングする方が良いと思います。それから、野球塾では基本的に金属バットを使っています。竹のバットを勧める指導者もいますが、竹は金属よりも衝撃が大きく、より手の痛みを感じます。少なくとも打撃フォームが固まるまでは金属バットを推奨しています。
■水本弦さん経営「リングマッチ」公式ホームページはこちら
https://www.ringmatch2023.com/
(水本弦 / Gen Mizumoto)
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