中学初心者に“スマートな動き”習得は遅い? 子どもを一流選手に近づける「拍手7回」

中学から野球を始めて上達する方法は(写真はイメージ)
中学から野球を始めて上達する方法は(写真はイメージ)

大谷に憧れて野球を始める子たちへ…野球上達の近道になる「コーディネーション」

 大谷翔平投手に刺激されて、中学から野球を始めたい――。そんな希望を抱いて、4月から新生活に入る子たちも多いことだろう。とはいえ、ボールやバット、グラブを使う野球を1から始めるのは簡単ではないし、部活動の顧問ら指導者も「どうやって教えたらよいか」と悩みどころだ。読売巨人軍の野球振興部長の倉俣徹さんは、「まずは、自分の体を自在に動かせる能力を磨くこと。それができれば道具の扱いが上手くなり、野球が上手くなります」と語る。初心者の上達につながるコーディネーショントレーニングを教えてもらった。

 群馬・高崎中央ポニーの監督でもある倉俣さんは、普段は硬式中学生を指導する立場だが、「将来的なプロ12球団維持のためにも、(競技人口の多い)中学軟式は重要」と、東京都内や地元群馬、福島などで公立中学指導者を対象に講習会を実施している。今年2月には水戸で行われた茨城県中体連軟式野球専門部の会合に参加し、各校の顧問にアドバイスを送った。

 倉俣さんが「育成の5本柱」として解説したのが、「コーディネーション(調整力)」「コンディショニング(筋トレや持久走、ストレッチなど)」「技術」「戦術」、そして「メンタル」。中でも、自分の体を自在にコントロールできる能力「コーディネーション」は、まだ一般的には聞き慣れない言葉だが、野球の上達には非常に大切で、小学生の巨人ジュニアのセレクションでも重要視されている。

 例えばボールを扱う感覚を磨くコーディネーショントレーニングとして、倉俣さんが紹介したのが「手ばたきキャッチ」。ボールを上に放って、落ちてくる間に何回拍手ができるか。もちろん小学生初心者にも適しており、小学1年生で1回、6年生で6回、中学1年生で7回と“学年”が目標回数の目安だ。「体の位置をなるべく動かさず、手ばたきしてキャッチする」のが肝要だという。

 さらに、上に投げた間に地面を手でタッチしてから捕球する「地面タッチキャッチ」、左右に体を1回転してから捕球する「左右回転キャッチ」も紹介。「地面タッチ」は、しゃがんで地面に触れる時に一度、ボールから目を切るため難易度が高まる。「左右回転」は「自分が回転しやすい方だけでなく、左右両方でやるのがポイント」と倉俣さんは語る。

手ばたきキャッチを解説する倉俣徹氏(右端)【写真:編集部】
手ばたきキャッチを解説する倉俣徹氏(右端)【写真:編集部】

中学文法から始めても「国際人にはなれます」

 こうしたメニューを短時間に区切ってウオームアップ代わりに行えば、子どもたちも飽きがこないし、いきなり投げる・打つをやらせてハードルを上げるより、実は「劇的に上手くなるし“センス”も良くなります」と倉俣さんは説明する。

 一般的に、技術習得は脳・神経系が育つ小学生以下の「ゴールデンエイジ」の時期に行うのが理想だ。呼吸・循環器系や筋肉・骨格が発達する「ポストゴールデンエイジ」と呼ばれる中学生以降で、スマートな身のこなしを習得するのは遅いとも言われる。

 それでも、倉俣さんは英語学習に例えて、「中学時代に基礎的文法から英語を始めても、ネイティブのように流暢には話せないかもしれないけれど、TOEICで高得点を取ってビジネスに活かしたりと“国際人”にはなれます」と力説する。

「巨人で言えば、先発ローテの戸郷(翔征)投手や井上温大投手は中学軟式出身。今年の12球団の開幕投手も、戸郷投手を含めて半分は中学軟式です。硬式に劣るということはなく、可能性はゴロゴロ転がっている。実績以上に、怪我に注意しながら体力、技術、実戦能力など“個を磨く”指導をしてあげることが大事です」

 ポテンシャルを狭めないためにも、まずは“自在に動ける”能力から。スタミナや柔軟性も高めつつ、「野球を好きになる」ところから導いてあげたい。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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