「フライが怖い」子どもが増加中 スマホ社会で失った“重要動作”、遊具撤去も影響

プロトレーナーの高島誠氏が危惧…「登る」動作がないことによる少年野球への悪影響
ジャングルジム、登り棒、雲梯(うんてい)、シーソー……。昔の公園や小学校に必ずといっていいほど設置されていた遊具は、近年、安全性や老朽化の問題から撤去されることが多くなっている。以前であれば、遊びの中で自然と腕力や脚力が鍛えられ、遊具の順待ちをすることで社会性を養うことだってできた。Full-Countでは少年野球などのスポーツ界で活躍する専門家・トレーナーに子どもの「運動神経向上」をテーマに取材。オリックスやMLBのナショナルズでトレーナー経験を持つ高島誠さんは、遊具がなくなること、スマートフォンなどの機器が子どもたちに広がることで、「ある動作」が欠落すると指摘する。
立つ、歩く、投げる、捕る……。幼少期は、生涯にわたって必要な運動の基礎となる多様な動きを幅広く獲得するために大切な時期だ。ただ、ジャングルジムや登り棒などの遊具が撤去されることで、今の子どもたちは、「登る」動作をほとんど経験せずに育つ。
「登る系の遊具で遊ぶ時は、基本的には必ず上を向きながら登るじゃないですか。最近は登るという動作をほとんどやらなくなったせいで、『上を向く』という学習を意外としていなかったりします」
現代の子どもたちはスマホやタブレットなどの使用で下を向くことが多く、上を向く動作は意識的に行わなければ、あまり機会がない。もちろん、野球をプレーする上では、「上を向く」のは必須の動作だ。
「上を向いた瞬間に身動きが取れない子がいたりするんですよ。“フライが怖くて捕れない”と言われたこともあります」
幼少期から登る動作を行わなかったことは、上半身の弱さにも直結する。高島さんは、球速140キロを目指す選手たちのために、最低限必要な体力数値を設定して計測をしているが、ベンチプレスで達成率に届かなかった選手が一番多かったという。腕力が弱ければ、肩肘への負担が増し、投球障害も起きやすい。

「野球しかやっていないというのは非常に良くない」
「登る系の遊具の何がいいかというと、力を抜くと下に落ちてしまう。ただ、全てに力を入れていると、登り切ることができない。抜くところは抜き、入れるところは入れるという動作を無意識に学習できることです。野球でも投球や打撃で片足立ちをしながら、異なる動きを行います。まさに登りながら右手、左手、右足、左足で違う動きをするので、野球には本当に有効です」
グラウンドに登る系の遊具があればウオーミングアップなどで活用できるが、なければ、両足を持ってもらい、両腕の力で前方へ進む「手押し車」が有効で、バランスをしっかり取りながら体幹も鍛えられる。フライ捕球も、最初はフリスビーや、軽いプラスチックボールなどを使用し、まずは上を向いた状態で自分が意図する動きができるよう、何度も反復することが大切だ。
「昔であれば、遊具で一日中遊んだりできる体力や筋力がある子が野球をやっていましたが、今はそういったことを意識的にやらせないと、怪我も起きやすくなります。野球しかやっていないというのは非常に良くないなと思っています」
小さい頃から多様な動作を行うことが、野球へと直結する。高島さんは、21日から開催されるイベント「運動神経向上LIVE」に出演予定。指導者や選手に向け、パフォーマンスを上げるためのメニューを披露する。
高島誠さんも登場…子どもの運動神経向上に役立つトレーニングを紹介!
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(内田勝治 / Katsuharu Uchida)
球速を上げたい、打球を遠くに飛ばしたい……。「Full-Count」のきょうだいサイト「First-Pitch」では、野球少年・少女や指導者・保護者の皆さんが知りたい指導方法や、育成現場の“今”を伝えています。野球の楽しさを覚える入り口として、疑問解決への糸口として、役立つ情報を日々発信します。
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