打てない原因は「集中し過ぎ」　歩きスマホと共通…“ボヤッと”で高める0.1の反応

スポーツビジョントレーナーが語る周辺視野の重要性と鍛え方

　目を鍛えることが、野球の技術向上に繋がっていく。野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が21日、投球・打撃の上達に欠かせない“センス”を磨く、5夜連続のオンラインイベント｢運動神経向上LIVE｣を開催。野球の技術向上に不可欠な「運動神経」にフォーカスするイベント初日のこの日は、スポーツビジョントレーナーの上坂実さん、元楽天投手で現在はキッズコーディネーショントレーナーを務める土屋朋弘さんが登場した。

　この日のテーマは「ボールを見る力」。野球に必要な運動神経の要素として、感覚を受け取って脳で気付く「知覚」がある。目から得る情報を、素早く適切に認識することが野球の上達においては重要になるという。

　ただ、1点を集中し過ぎて“見る”ことは、かえって逆効果になることも――。打撃の指導で「バットに当たるまでボールを見ろ」と言う指導者もいるが、上坂さんは「実際に当たるところは見えない」と指摘する。NPBを経験した土屋さんも、「球が速くなればなるほど、ボールを見る時間は短くなります」と同意見だった。

　学童野球でも、投手がリリースしてから捕手に届くまでの時間は約0.5秒。打者が認知するのに約0.2秒、そしてスイングを仕掛けるのに約0.2秒かかるため、見極める時間はわずか0.1秒しかないという。「ボールをよく見る」のではなく、打者のほとんどはリリースした瞬間にある程度の予測を立てスイングを行っている。

周辺視野は1点だけではなく「ボヤっと見る」こと

　そこで必要な能力が「周辺視野」。野球に限らずスポーツでは、周辺視野に意識を置くことでパフォーマンスが上がると言われている。上坂さんは「当たるところは見えない、と考えていたほうがいい。よく見過ぎると反応が鈍くなる。ドジャースの大谷（翔平）選手もあごを上げて、視野を広げて周辺視野を使う動作が見られます。実際にトレーニングで周辺視野を拡大できれば、反応が早くなるデータも出ている。振らなくてもいいボールを見逃すことにも繋がります」と説明する。

　昨今はスマートフォンやタブレットといったデジタルデバイスを見続けることが習慣化し、目を動かさない時間が多くなっている。長時間、1点を見つ続けると目の疲労やストレスが溜まり、動きは鈍くなり、周辺を認知する能力は各段に下がってしまう。

「視野を広げて、感知する力が大切になります。アンテナをたくさん立てることが大事。よく、歩きスマホは危険と言いますが、その理由は1点を見つめることで視野は95％狭くなるからです。周りを感知できなくなることで事故に繋がる。スポーツの現場でもそれは同じです。簡単に言えば『ボヤっと見る』ことが必要になります」（上坂さん）

　だからこそ、打撃や守備を含めプレーの質を高めるには、目を機能を高めることも必要になる。頭を動かさずに、目だけを動かして指先などターゲットを追うビジョントレーニングや、両目を中心に寄せる寄り目などで“目を鍛える”ことが効果的だという。

　筋力やスキルを向上させることも大切だが、それにはしっかりとした土台があってこそ。球児を預かる指導者たちは「目の働き」にも注意してもみるのもいいだろう。野球初心者から上級者までの悩みを解決する「運動神経向上LIVE」は25日まで開催される。

「運動神経向上LIVE」4月25日（金）まで開催中…見逃し配信もあり

　Full-Count、First-Pitchと野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」では、4月25日まで5夜連続でオンラインイベント「運動神経向上LIVE」を開催中。足の速さなどの俊敏性を身に付ける方法は？　バットやボールの扱いをうまくするには？　選手や指導者、保護者が知りたい、野球などのスポーツ上達に必須の能力向上につながる練習法を、豊富な実績を持つ指導者・トレーナー陣がアドバイスします。参加費は無料。出演者などの詳細は以下のページまで。

【運動神経向上LIVE・詳細】

https://first-pitch.jp/article/coaching-methods/20250403/10330/

【参加はTURNING POINTの無料登録から】

https://id.creative2.co.jp/entry

（First-Pitch編集部）