「やりたくてもできる場所が…」 種類を問わない“障がい者野球チーム”を設立した理由

障がいの種類を問わない兵庫県の野球チーム「ダンデライオンズ」【写真:チーム提供】
障がいの種類を問わない兵庫県の野球チーム「ダンデライオンズ」【写真:チーム提供】

今月の全国大会に挑む…障がいの種類に問わない野球チーム「ダンデライオンズ」

 誰もが楽しめる野球環境を作りたい――。身体、知的などの障がいの種類を問わない兵庫県の野球チーム「ダンデライオンズ」が、今月17、18日に開催される障がい者野球の甲子園「全国身体障害者野球大会」に初出場する。監督を務める井上聞三さんは、「普段、得られない緊張感を味わってほしい。好きなことを全力に取り組む姿を見せてくれれば」と期待を込めている。

「どんな状況でも強く優しく咲き誇る」。タンポポのようなチームを目指す「ダンデライオンズ」が発足したのは2023年だった。前身の身体障がい者のみのチームの選手が足りなくなる中、知的障がいのある生徒や保護者から、「野球をやりたくてもできる場所がない」と相談を受け、全ての障がいを受け入れるチームとして再スタートを切った。

 前身のチームから監督を務める井上さんは、「野球を楽しむ権利は誰もが持っている。最初の1年はあえて目標を作らず“楽しむ環境”を作ることにしました」と振り返る。支援学校には本格的な部活動はなく、土日祝日を持て余す子どもは沢山いる。「野球をやりたくても環境がない」。そんな全ての“野球人”が全力で取り組めるチームを作りたかったという。

 チーム発足から徐々に人数が増え、今では小学生から大人まで男女20人を超える選手が所属するようになった。初めこそ「楽しむこと」重視だったが、野球への熱い思いを持つ選手たちの姿を目の当たりにし、「次は目標を作り、全員がそこに向かって頑張っていこう」と決断。昨年6月に身体障がい者野球連盟への申請が通り、目標は全国大会出場に変わった。

全国大会に向けて練習にも熱が入る【写真:チーム提供】
全国大会に向けて練習にも熱が入る【写真:チーム提供】

野球を通じて成長していく姿「親御さんから積極性が出てきたと」

 発足当初は月1、2回の練習で人数が9人に満たないこともあった。それでも、徐々に選手たちが集まるようになり、練習日が週1回に増え、定期的に練習試合もできるほどに。選手たちが自発的に動く姿に「技術もそうですが、人間的にも少しずつ成長している。早く野球をやりたい、うずうずしている姿を見るのが嬉しい」と、井上監督はチームの成長を感じている。

「野球が上手くなっていくこともそうですが、一番嬉しいのは親御さんから学校や職場で『積極性が出てきた、自信を持って人前で話すことができた』と言われることですね。“野球部”という環境は礼儀やチームプレーを学べる。時代に逆行してるかもしれないですが、皆で声を出したりとかもそうですよね。そういった雰囲気を味わわせてあげたい」

 チームは現在、17日からほっともっと神戸で開催される「全国身体障害者野球大会」に向け、練習を続けている。ベンチ入りメンバーは身体障がい者がメインで、知的障がい者は4人まで(出場は3人)と制限されるが、井上監督は「全員気持ちは同じ。一緒になって戦う全員野球を見せたい。素晴らしいグラウンドでプレー、応援できる雰囲気を感じてほしい」と、更なる成長を期待している。

 障がいの種類によってはプレーの制限があるものの、選手たちの野球に対する情熱は誰よりも強い。創部3年目の「ダンデライオンズ」はこれからも、強く咲き誇っていく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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