低学年に多い「肘が下がる」投げ方…簡単な修正法は? 巨人アカデミー直伝“理想のトップ”

ジャイアンツアカデミーが低学年指導で実践「くるっとスロー」とは?
野球を始めたての幼児や小学校低学年の子に、正しい投球動作を覚えてもらうには、どんな方法があるだろうか。特に、ボールを持った腕を後ろに引いて作る“トップ”の位置は、球質や故障にも関わる重要なポイントだが、小さい子に技術面を伝えるのはなかなか難しい。そこで、読売巨人軍が運営する「ジャイアンツアカデミー」の低学年向け指導では、ある掛け声を使って、理想の肘の位置をわかりやすく伝えている。その“魔法の言葉”とは?
ジャイアンツアカデミーでは毎年、東京・町田市少年野球連盟から依頼を受け、地元チームの選手・コーチを対象とした野球教室を行っている。子どもたちのスキルアップはもちろん、学童野球の指導者・保護者にメソッドを伝えることで、コーチングの引き出しを増やし広めてもらうことが目的だ。取材日には、指導者約30人と低学年選手87人に、投げる・打つ・捕るの基礎的なポイントを伝えた。
「良い投げ方、肘の位置を確認できるコツを教えます」とネットスローでの投げ方指導を担当したのは、アカデミーの黒澤和コーチ。そこで実演したのが「くるっとスロー」だ。
「まずは両足をパーに開いて、両腕もパーにして(真横に広げ)、グラブを持った前の手は投げる方向に矢印のように向けましょう。そして、ボールを持った手で自分の頭の横を“トントン”とたたいて、そこから“クルッ”と上半身を回転させて投げます。『トントン、クルッ』の掛け声で投げてみてください」
右投げの場合、ボールを持った右腕を肩の高さで真横に伸ばし、そこから肘を曲げて、ボールを握る手の親指・人差し指辺りで、右耳の上付近を“トントン”と叩く。実際にやってみると、肩の位置と肘の位置が水平になることがわかるが、これが理想の“トップの形”だ。

指導者からも、「シンプルで実践しやすい」と好評
トップを作った際に、肘の位置が高くなったり、低くなったり、頭とボールの位置が離れすぎたりしてしまうのは、子どもによくある怪我にもつながるNG動作だが、耳の上で“トントン”すると教えれば、難しく説明しなくても伝わりやすい。
そこから子どもたちは、黒澤コーチの合図に合わせて、「トントン、クルッ!」と元気よく掛け声を出しながら、ネットスローでの的当てに挑み、「狙ったところに投げられる」コツをつかんでいった。的当ては2〜3メートルの距離から始め、1年生は最長10メートル、2年生は最長12メートルで的に当たるようになれば合格だという。
実際の投球動作は、軸足からステップ足への体重移動(並進運動)に、上半身の回転運動が加わることで投げられるが、並進運動よりも回転運動を先に教えた方が悪癖もつきにくいという。このように下半身と上半身の動作を分解したほうが、教える側も教わる側も負担は小さく、周りの指導者からも「シンプルでわかりやすい。早速チームでもやってみたい」との声が聞かれた。
ちなみに黒澤コーチによると、「1、2年生の子たちは、喜んで『トントン、クルッ!』と声を出してくれますが、3、4年生になると、だんだん恥ずかしくなってくるみたいです」と笑う。だからこそ、低学年のうちにやっておきたい“魔法の掛け声”、ぜひ、初心者への投げ方指導で試してみてほしい。
(高橋幸司 / Koji Takahashi)
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