FA右腕に感じた“鋼の心” 約束を叶えた2つの拳…衝撃受けた光景に「羨ましいです」

オリックス・杉本裕太郎(左)と九里亜蓮【写真:小林靖】
オリックス・杉本裕太郎(左)と九里亜蓮【写真:小林靖】

オリックス・杉本裕太郎、九里亜蓮は「本当にメンタルが強い」

 揃った2つの拳には、感慨深いものがあった。オリックスの“ラオウ”こと杉本裕太郎外野手と九里亜蓮投手は、10日に行われた本拠地・DeNA戦で共にお立ち台へ上がった。1991年生まれで同学年の2人には「確かな絆」があった。

「ずっと約束していたことだったので、やっぱり嬉しいですね」。そう語るのは5回に左翼5階席へ特大の7号先制ソロを放った杉本だった。本塁打を放った際に披露する“昇天ポーズ”はお馴染みとなってきたが、1人で拳を突き上げるのは内心では寂しい様子。「僕が打った時は、できればみんなでポーズをして盛り上がってほしいですね」と目を細める。

 10日の試合では、杉本とともに拳を突き上げたのが九里だった。九里は昨オフに広島から海外FA権を行使して、今季はオリックスでプレー。同学年の杉本は「(昨オフに)電話が掛かってきて『パ・リーグで通用すると思う?』と相談を受けたことはありました。あんまりいないタイプやし、通用すると思うよと返事しましたね」と背中を押した1人でもある。

 移籍が決まったタイミングで再び連絡をもらうと「一緒に頑張ろうな!」と熱いメッセージを送った。九里は今季ここまで11試合に登板して5勝3敗、防御率2.07と大奮闘しており「もし亜蓮がいなかったことを考えるとゾッとしますね。めっちゃ頼もしいです」と賛辞を止めない。

 杉本が驚いたことがある。3日の広島戦(京セラドーム)で九里は古巣を相手に5回88球、12安打4失点(自責2)で降板。初回に7安打3失点と苦しい立ち上がりげゲームはスタートした。4点を追う9回に杉本が左中間にソロを放つと、九里も昇天ポーズをしてくれた。

「さすがにあの状況で一緒に昇天ポーズをしてくれたのは、本当にビックリしました。(10日の試合後に)お風呂で聞いたんですけど『だってもう、切り替えて盛り上げるしか役割がないやん』って。確かに、言っていることは全くその通りなので。反省は試合が終わってからすればいいと。試合中は盛り上げて、逆転してもらうことが全てだと言っていました。本当にメンタルが強いなと感じましたね」

 移籍1年目でも貫くフォア・ザ・チームの精神。マウンドで気迫を表現する同学年右腕に杉本は「自分は感情を表に出してやるタイプじゃないので、羨ましいです」と汗を拭う。2021年に本塁打王を獲得した“ラオウ”は今季健在。勝負所でのアーチで絶叫し、固く握った拳を突き上げる。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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