“交流戦全敗”も…甲斐拓也を「外す必要ない」 巨人OB捕手が進言「使うべき」

巨人・甲斐拓也【写真:矢口亨】
巨人・甲斐拓也【写真:矢口亨】

中日でMVP捕手、巨人でも活躍の中尾孝義氏「相性や一番高い打率など柔軟に考えて」

 プロ野球はセ・パ交流戦が終わった。昨年セ・リーグ優勝を果たした巨人だが、交流戦は11位と苦しみ、勝率5割を切ってペナントレースに戻ることになった。中日でMVPに輝くなど巨人、西武と3球団で名捕手として活躍した野球評論家・中尾孝義氏に、巨人が波に乗れない理由と逆襲への方策を聞いた。

「やっぱり岡本ですよ」。中尾氏は開いた穴の大きさを強調する。岡本和真内野手が5月6日の阪神戦(東京ドーム)のプレーで左肘のじん帯を損傷。主砲を欠いて突入した交流戦18試合のチームの得点はわずか42。打率も.227と低迷した。「4番を打つ選手がいなくなったのは痛い。ほっといてもホームラン30本を打つバッターな訳ですから」。

 軸が固まらないと、打線も流動的にならざるを得ない。阿部慎之助監督もあの手この手を尽くし、交流戦は全て異なる打順を組み、岡本の代役の4番には丸佳浩外野手、吉川尚輝内野手らを起用した。中尾氏は新助っ人のトレイ・キャベッジ外野手を推すものの、「シーズン最初はいいと思ったんだけど、最近あまり打ててないからねぇ……」。

 中尾氏は大胆かつシンプルな案を示す。「しっかりした4番がドンと座っているならいいけど、今はそうじゃない。それだったら相手のピッチャーとの相性だったり、その時々で1番打率が高いバッターとかに任せてみてはどうでしょう。決まらない時は柔軟に考えて。日替わりでもいいと思いますよ」と提案した。

2軍降格の戸郷翔征は「球離れがめっちゃ早い」

 岡本の不在は怪我でやむなしも、エースの方は状態が上向かない。戸郷翔征投手は15日のオリックス戦(京セラドーム大阪)、22日の西武戦(東京ドーム)と連敗し、今季2度目の登録抹消。「体の軸がなくなっていて、球離れがめっちゃ早い。上体と手だけで投げているので打者からボールが見やすい。1巡目は抑えられても2巡目にはバッターも目が慣れて打たれます。真っ直ぐもフォークも投げ方が悪い」と指摘する。

 菅野智之が米大リーグ・オリオールズに移り、エースとして一本立ちを期待されながら、よもやの不振。「大黒柱が抜けて『今年は俺が』と思うのはいい事だが、勘違いをしてはいけない。戸郷は実績はあるけど、まだまだ本当に巨人を背負って立つだけの働きはしてません。驕りじゃないけれど、その辺りをもう一度見つめ直して欲しい。プロに入って出だした頃と今の気持ちがどうなんだ、と」。山崎伊織、赤星優志ら年齢の近い先発陣が奮闘中。再調整で本来の姿を取り戻せば、チームに勢いがつくはず。

 今季ソフトバンクからFA加入した甲斐拓也捕手はシーズン序盤は打撃好調だったが、5月以降はペースダウンした。交流戦では7度の先発マスクを被ったが、7戦全敗と厳しい結果になった。それでも「甲斐を外す必要はないと思います。もともとバッティングを期待されていた訳ではない。使うべき」。シーズンは長い。我慢の時期と捉える。

 中尾氏は中日からトレードで19889年に巨人入り。チームは優勝し、ベストナインにも選出された。「僕は監督の藤田(元司)さんから『斎藤雅樹を何とかしてくれ』と言われました。キャッチャー出身の阿部監督も現状の捕手陣では物足りないから甲斐を獲りにいったはず。何か声を掛けているでしょう」。体験を踏まえ、信頼関係の強さを推測する。

 もちろん大城卓三、岸田行倫、小林誠司ら他の捕手の力も必要だ。「甲斐が出てない時、リードが悪いというなら阿部監督がベンチからサインを出してもいい。捕手の経験のためには打たれて覚える事もあるんですが、ジャイアンツは勝利が第一条件なんだから」。

 交流戦は上位6チームがパ、下位がセにきっちり分かれた。結果的にセもパもリーグ内の順位に大きな変動はなかった。巨人は首位の阪神から4・5ゲーム差の4位。「これだけ苦しかったのに、この位置にいる。まだシーズンは半分ですよ。リーグ連覇のチャンスはあります」。中尾氏は、巨人の巻き返しに注目している。

(西村大輔 / Taisuke Nishimura)

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