吉田正尚「つらさが8割以上」 耐え続けたリハビリ、復帰直前に明かす“究極の人生論”

吉田正尚、メジャー復帰へ「結果が求められると思います」
フェンウェイパークの“高い壁”を、じっと見上げた。レッドソックスの吉田正尚外野手は、9日(日本時間10日)の本拠地・ロッキーズ戦からメジャー復帰する予定で、スタメンでの出場が見込まれている。昨年10月に右肩を手術。今季は開幕から負傷者リスト(IL)入りしていたため、自身の“開幕戦”となる。
チーム93試合目での復帰に「ここまで来ましたけど、残り限られた時間ですので。結果が求められると思いますので、結果が出せるように。最後、終わった時に良かったなと思えるようにしたいなと思います」と言葉を選んだ。
ア・リーグ東地区4位ながらもプレーオフ進出を狙い、チームは後半戦に臨む。「最後まで諦めずに戦っていますし、その一員に早く加われるようにと思っていました。その日が来るのを楽しみにしていました」。冷静な表情も、胸中は熱いものがある。
リハビリ生活は、グッと耐える日々だった。「世の中には、いろんな『タラレバ』があります。あの時、こうしていれば良かったとか、ああしていれば……とか。ただ、そう考えても、もう遅いんです。人生は『瞬時の判断』の連続。野球でも毎球、その繰り返しです。『あの1球』は戻ってきません。その1球を悔いなく仕留めるため、日々、鍛錬を積むんです」。ずっと思い描いた、フェンウェイパークの打席に、背番号7が戻ってくる。
長女は7月7日に5歳の誕生日を迎えた。一緒に海を渡った妻と2人の娘が支えてくれるから、1人の父親として職場に向かえる。「子どももね。頑張っているので。自分も野球を頑張れるように」。幾多の困難を乗り越えてきた。
「人生、つらいことが8割以上を占めていると思います。でも、これも考え方1つで変わる。『人生、つらい方がトータルすれば楽しい』。僕は、そう思っています。いっぱい苦労して、遠回りしても、自分の力で掴んだものは大きい。もちろん、心が折れることもあります。だけど、その瞬間にハッと気がつくんです。『これは次のステップに進めるチャンス』なんだと」
栄光も挫折も知っている。真剣勝負にリハーサルはない。誰にも見せない努力で、いつも未来を切り拓いてきた。グリーンモンスターに当てていた焦点を少し上げると、澄み切った青空が見えた。ふと笑みが溢れる。心からやり切ったと思う日まで、まだまだ歩みを止めるはずがない。
(真柴健 / Ken Mashiba)