大型契約も続いた欠場…聞こえた“雑音” 周囲の心配を吹き飛ばした吉田正尚の決断

ロッキーズ戦に出場したレッドソックス・吉田正尚【写真:ロイター】
ロッキーズ戦に出場したレッドソックス・吉田正尚【写真:ロイター】

今季初出場で3安打の吉田正尚…“雑音”も「強く戻って来るしかなかった」

【MLB】Rソックス 10ー2 ロッキーズ(日本時間10日・ボストン)

 自分を信じた決断に、間違いなんてない。レッドソックスの吉田正尚外野手が9日(日本時間10日)、本拠地でのロッキーズ戦に「6番・DH」で今季初出場し、4打数3安打1打点の活躍でチームを6連勝に導いた。昨年10月に右肩を手術。長いリハビリ生活を終え、この日に60日間の負傷者リスト(IL)からメジャー復帰を果たしたばかりだった。

 夢を後押ししてくれたのは、家族の存在だった。2022年オフ、吉田はレッドソックスと5年総額9000万ドル(約132億円)の大型契約を結んだ。オリックスで活躍していた頃から、家庭内で「メジャーに行きたい」と公言したことは1度もなかった。それでも、吉田は深く頷く。「妻は、僕の夢を知っていたと思います」。常に寄り添うパートナーは、そっと背中を押してくれていた。

 NPB通算7年間で762試合に出場。計884安打を放ち、打率は.327。首位打者を2度獲得し、2022年の日本シリーズではサヨナラ本塁打も放った。移籍の決断をした当時は29歳。「野球選手である以上、年齢的な問題もあった。メジャーに挑戦するのであれば、30歳までに……と。実際、そう考えていました。それは妻も理解していたと思います。僕の考えを優先して、応援してくれて感謝しかないです」。

 日本野球界で生涯を過ごせば、歴史に残す名前の数は多かったはずだが「その選択肢は僕にはなかったですね。僕の本質は、結果の積み重ねの部分じゃない。その日のベストを尽くすこと。通算打率なども何かの記事でチラッと見たら気になっていましたけど、それは参考資料ぐらいの感覚でした。上には上がいると思う。ハングリーさというか、反骨心がなくなったら終わりかなと思っています」と冷静に自身の判断を分析する。

 故郷の福井県・麻生津小学校6年の時には、卒業文集に将来の夢を「大リーガー」と強く記した。「プロ野球選手」と書く友人が多い中、吉田は「大リーガー」と書いた。「なんでだったんでしょうね(笑)。やっぱり、あのダイナミックさというか、豪快なところに憧れていたんだと思います。テレビ中継もメジャーをずっと見ていましたから」。夢の舞台に立って、3年が経った。

 酸いも甘いも、全力で噛み分けてきた。今季は怪我の影響で出遅れ、ようやく迎えた“開幕戦”で意地の4打数3安打1打点。「どうなっているんだ? という周りのいろんな意見もありましたけれど、僕自身は強く戻って来るしかなかったので。少しでも早く良い姿を見せられるようにと思ってきました」。どんな人生にも挫折はある。選んだ茨の道は、まだまだ続く。夢中になれる男は強い。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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