開幕直後に“異変”…痩せ細る西武新人「食べられない」　直面した「人間のガス欠」

元西武の金子侑司氏、キャンプ中は「どうしていいか分からなかった」

　俊足巧打を武器に西武で活躍した金子侑司氏はドラフト3位指名で立命大から入団した。2013年はルーキーながら開幕スタメンの座を掴んだが、プロの厳しさにも直面し「人間のガス欠ってこうなるんか」などと回顧した。

　初の春季キャンプはA班スタート。緊張感のある練習に圧倒された。「僕の人見知りに加えて、先輩の皆さんのオーラがすごい。最初はなかなか喋れなかったです」。現在も活躍する栗山巧や中村剛也はバリバリの中心選手。同学年ながら高卒入団していた浅村栄斗は「すでにスター。同級生なのにすごかったです。最初はなかなか話してくれなかったですけど（笑）」。素っ気ない態度に戸惑ったが、徐々に打ち解けていった。

　主軸の打撃練習は凄まじかった。さらに「片岡（治大）さんの守備は驚きました。上手すぎて。僕は無理だと思いました」と驚きの連続だった。

　ルーキーでただ一人、A班メンバーだったこともあり、休養日は「一緒にご飯に行く人もいなくて、休みの日もずっとホテルにいました。どうしていいか分からなくて」。チームになかなか馴染めずにいたなか、武山真吾と星孝典の捕手コンビから食事に誘われた。

「初めて先輩と行ったご飯でした。すごく嬉しくて。プロ生活ですごく印象深い出来事の一つです。あとは涌井（秀章）さんとも仲良くさせてもらいました。『お前は細いんだからいっぱい食べなさい』とか言ってくれて、すごく優しかったです」

開幕1番候補も「7番にするから気楽にやれ」

　不動のリードオフマンだった片岡が怪我していたこともあり、オープン戦では金子氏が主に1番を任された。「開幕・1番」もよぎり「すごいプレッシャーでした」。しかしその後、渡辺久信監督から「片岡が帰ってくるから、1番はヤス（片岡）に任せる。お前は7番にするから気楽にやれ」と伝えられた。重圧からの解放で「『ありがとうございます』という心境だったのは覚えています」と振り返った。

「7番・右翼」で出場した日本ハムとの開幕戦では初打席で遊撃内安打を放つなど、2安打をマーク。その後も3・4月は27試合で打率.306、1本塁打、12打点と躍動するが、5月に入ると快音は止まった。　

「5月半ばぐらいから全然バットを振れないんです。体重もめちゃくちゃ落ちる。元々細かったのに5、6キロは痩せた。ご飯も食べられないし、しんどかった。毎日やることの難しさですよね。人間のガス欠ってこんな感じか。動かれへん、みたいな状態でした」

　学生時代にはなかった真剣勝負の毎日。心身を削りながら戦った。後に2度の盗塁王に輝くスピードスターの1年目は3度の出場選手登録と抹消を繰り返し、94試合の出場で打率.223、2本塁打、23打点に終わった。

（湯浅大 / Dai Yuasa）