大型契約も出場機会激減「使ってくれよ」 悲劇に見舞われ苦悶…陥った悪循環

現役時代は西武でプレーした金子侑司氏【写真:小池義弘】
現役時代は西武でプレーした金子侑司氏【写真:小池義弘】

元西武の金子侑司氏は2019年オフに4年契約を結びFAを“封印”

 俊足を武器に西武の中心選手として活躍した金子侑司氏は、7年目の2019年オフに球団と4年契約を結んだ。2020年に取得見込みだった国内フリーエージェント(FA)権に先立ってのものだった。しかし、契約後は怪我や不調なども重なり、思うような結果を出せず、苦しい立場に置かれることとなった。

 2016年に53盗塁で初タイトルを獲得すると、2017年は25盗塁、2018年も32盗塁とスピードを武器に躍動。2019年は41個で2度目の盗塁王に輝き、同年オフに球団から4年の大型契約を提示された。

「(2020年の)FA権も見据えていたので、どうしようかな、という気持ちはありました。選手として他の球団の評価を聞きたいという思いは当然ありました。でも、自分のなかで他チームへの希望があったわけではないし、ライオンズに指名してもらった恩もあるので、残った方がいいかなと。すごい契約で誠意も感じました。純粋に嬉しかったです」

 長期契約を結んだからこそ、1年目から結果を残したい気持ちはあったが、2020年はコロナ禍で難しいシーズンとなり86試合の出場で打率.249。盗塁数は5年ぶりに20を下回る14に終わった。翌2021年はさらに成績を落として打率.192、9盗塁と苦しみ、「全然ダメだったんです」と振り返った。

「このままではヤバい」。崖っぷちの覚悟で迎えた4年契約3年目の2022年は一転して「調子がよかったんです。今年絶対いける、やり返すという気持ちでした」。高いモチベーションで臨んだが5年ぶりに開幕スタメンから外れた。「4月の半ばまでずっとベンチに座っているだけ。絶対に見ていろよと思っていました」。

 代走、守備固めで数試合出場しただけ。「複数年の大型契約してんねんから使ってくれよ」。心の中で叫びながら、チーム19試合目の4月19日のロッテでようやくシーズン初スタメン。“出遅れ”を挽回すべく高打率を残していたが、5月20日の日本ハム戦でアクシデントに見舞われた。

元西武・金子侑司氏【写真:湯浅大】
元西武・金子侑司氏【写真:湯浅大】

押し寄せる世代交代の波「試合に出たら結果を残そうと焦ってしまって」

「一塁まで全力疾走している最中、右ももがえげつないくらいに“バチーン”といっちゃったんです」。肉離れだった。通常は1か月程度で戻れるが、金子氏の場合は長期化した。1軍復帰したのは約2か月半後の8月2日のオリックス戦。それでもまだ万全ではなかったが「その年は自信があったし、結果を残さないと次の年が本当に苦しくなると思ったので、少し無理して戻ったんです」。

 第4打席で遊撃内野安打を放った際に再発した。わずか1日で離脱することになった。9月中旬に1軍に昇格し11試合で打率.286を残すも、不振だった前2シーズンのイメージを払拭するには至らず。年が明けた4年契約4年目は開幕1軍入りを果たしたものの出場は47試合に激減した。

「年齢も30を過ぎて、自分がすごく良かった時から少しずつ状況が変わってきていました。全ての野球選手が直面することだとは思いますが、出場機会が減ってしまったことで、いざ出番が回ってきたときに何とか結果を残そうと焦ってしまう。焦って結果を残せる世界ではない。悪循環に入っていました」

 球団の顔として活躍していた金子氏だったが、プロ野球界の厳しさに再び直面した。「プロになる人はみんな実力があるし、1年間しっかり試合に出ていたら結果を残すことはできると思うんです。本当に難しいですよね」。怪我に泣かされ、世代交代の波を感じた4年契約だった。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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