元ド軍157キロ右腕→イップス発症…異色の八王子実践監督 球児に求める大谷の“顔”

全国制覇3回の日大三に6回コールド負け、今春東京都大会のリベンジならず
第107回全国高校野球選手権西東京大会は24日に準々決勝戦が行われ、22年ぶりにベスト8入りしていた八王子実践高は、全国制覇3回を誇る日大三高に1-11の6回コールド負けを喫した。米国にルーツを持つ河本ロバート監督のタクトによる快進撃は、ひとまず終演を迎えた。
八王子実践高は今年の春季東京都大会でも、日大三高に1-10の7回コールド負けを喫していた。リベンジ成らず、河本監督は「ミスが出た初回に流れを持っていかれてしまった。大分苦しかった」と序盤にペースを掴めなかったことを悔やんだ。一方で、22年ぶりのベスト8という結果については「ここまで連れてきてくれた生徒たちに、本当に感謝したい」と最後まで戦い抜いたナインを労った。
河本監督の経歴はユニークだ。東京生まれで、米国人の父と日本人の母を持ち、現役時代は最速157キロを計測する剛腕投手だった。
中学まではサッカーに取り組み、野球を始めたのは八王子実践高に進学してから。河本監督は「本当はバスケットボールがやりたかったんですが、4歳上の兄に半ば強引にやらされました」と苦笑混じりに振り返る。
“無理やり”始めさせられた野球だったが、1年生の秋にはいきなり137キロを計測。亜大時代には最速153キロにアップし、一躍プロ注目の存在となった。NPBからの調査書は届いていたものの、米球界への憧れが強く、悩んだ末にドジャースとのマイナー契約を決断。海を渡り、球速は157キロに達した。
2008年から4年間米国でプレーしたが、3年目の2011年にイップスを発症し、同年に帰国した。その後は日本の独立リーグや台湾球界などを渡り歩き、29歳で現役を引退。2019年から母校である八王子実践高で指揮を執っている。
「大谷選手のように感情豊かで人に対して配慮のある人になってほしい」
河本監督は「選手たちには“良い顔”をして野球をしてほしいんです」と語る。“良い顔”とは何か。その代表例として、ドジャース・大谷翔平投手を挙げる。「大谷選手のように感情豊かで、人に対して配慮のある人になってほしい」と選手への思いを明かした。
河本監督と選手たちの関係は親密だ。塚原翔太投手(2年)は「『監督』ではなく、『ロバートさん』と呼ぶことになっています。監督と選手の間の距離が近く感じます」とうなずく。当の河本監督はというと「『監督』と呼ばれる器ではないので……」と謙遜するが、選手たちが向ける温かい視線から、慕われていることが見て取れた。
塚原は「(八王子実践高の)過去最高成績は、ロバートさんが1年生の時のベスト4なので、来年はロバートさんとベスト4を狙っていきたいです」と続けた。河本監督も「また神宮に戻って来れるように、違った八王子実践を築いていきたい」と決意を新たにした。
(井上怜音/ Reo Inoue)