藤浪晋太郎、日本復帰も「甘いもんじゃない」 MVP捕手が見抜いた“悪癖”…DeNAでも未知数

中日など3球団で活躍した中尾孝義氏、DeNA補強の利点は「未知数でなく計算できる」
プロ野球はオールスター戦が終了し、後半戦に突入する。セ・リーグは首位の阪神が貯金を独占。中日でMVPに輝くなど巨人、西武と3球団で名捕手として活躍した野球評論家・中尾孝義氏は「まだ他のチームにもチャンスがない訳じゃありませんよ」と追いかけるチームの出現に期待する。7月に“動き”があった2チームに注目してもらった。
昨年リーグ3位から日本一にまで駆け上がったDeNAは阪神から9.5ゲーム差の2位。今月末の補強期限を前に一気に3選手と契約した。昨シーズン在籍したマイク・フォード、昨年まで中日でプレーしたダヤン・ビシエドの両内野手。そして米大リーグ、マリナーズ傘下3Aタコマを退団した藤浪晋太郎投手で、藤浪は阪神時代以来3年ぶりの日本球界復帰となった。
DeNAは交流戦で12球団最低のチーム打率など、攻撃陣が迫力を欠いている。西武、オリックス、阪神で編成部門を担った経歴を持つ中尾氏は「補強がもっと早い時期でも良かったのかなと考えます。打線がつながっていた去年程の得点力がない。牧(秀悟内野手)が中心ですが、なかなか打線全体が上がって来ませんでした」と前半戦を分析する。
2018年には首位打者も獲得したビシエドは36歳、昨年クライマックスシリーズ(CS)、日本シリーズで躍動したフォードが33歳。体力的な不安はないのか。「年齢的に以前程の力が発揮できるか分からないが、2人とも日本球界にいましたからね。全くの未知数じゃない。シーズン途中加入でも馴染める。ある程度計算できるのでは」と利点を示す。
藤浪は投げてみないと分からないピッチャー、「ファームである程度、結果を残さないと」
藤浪は今季3Aで21試合に登板し、防御率5.79。米国でも剛球は健在も、制球難は改善されなかった。中尾氏は、軸足の右膝をポイントに挙げる。
「右膝が大きく曲がっているフォームだったら日本球界でも通用しないと思います。曲がり過ぎ。踵に体重がかかるような感じになるから、テークバックも背中側にいって肘が回ってこない。もう少し突っ立って投げる形になれば、いいフォームになる。沈み過ぎている、低過ぎます。阪神入団2、3年目ぐらいの時は肘が回って上から叩けるようになってたんですが……。また沈むようになった。肘が回らなくなると、抜け球が多くなるんです」
藤浪の起用法はどうなるのか。「投げてみないと分からないピッチャーだから、難しいですよね。勝っている試合を途中で任せるのは怖い。ひとまず、先発が足りなくなった時の先発。ただキャンプで先発の練習はしてないでしょうから……。ちょっと負けている展開のリリーフで抑える。そういう結果を続けて出してくれれば、そこからまた考えていくのでは」。三浦大輔監督の腹案を推察する。
中尾氏は期待すればこその叱咤激励も忘れない。「アメリカの3Aを退団して以降、試合で投げてないでしょう。ファームである程度、結果を残さないと。『日本に戻ってきました。すぐ1軍で投げられますよ』なんて、そんな甘いもんじゃない。2軍で結果を出してないのに1軍だと、チームメートだっていい気はしません。藤浪は普通の選手より注目されていますから」と覚悟を促す。
中日は5年ぶり7連勝で「自信につながった」 新人・金丸は1つ勝てば連勝できる
今季から1軍の指揮を執る井上一樹監督が率いる中日は、今月5年ぶりの7連勝をマークした。昨年まで3年連続の最下位だったチームは4位につける。2位のDeNAとは2.5ゲーム差にまで接近中。中尾氏は古巣の今シーズンを「上がったり下がったり、連敗もありながら7月に7連勝。よくやっていますよ。選手たちの自信につながっていると思います。表情が明るくなった。結果が出るのが一番の薬なんです」と変化の兆しを評価する。
後半戦に向け、起爆剤となり得る存在も力説する。ドラフト1位ルーキーの金丸夢斗投手は、5月5日のデビュー戦から8試合の先発で、7試合はクオリティースタート(6イニング以上、自責点3以内)の安定ぶり。しかし、打線の援護に恵まれず、プロ初勝利はお預けの状態なのだ。「みんな金丸が投げると『点を取ってやらないといけない』と逆にプレッシャーがあるのかも知れない。でも金丸は1つ勝ったら、ボンボンボンと連勝していく内容ですから」。
中尾氏は“直系の後輩”もプッシュする。「ドラゴンズの背番号9」を付ける新人の石伊雄太捕手は既に43試合に出場。「僕だけでなく、井上監督も背番号9だった。期待の数字なんですよ」と笑いつつ、「リードもバッティングも思い切りがいい。失敗したっていいんです。そうやって覚えていく。相手からしたら、1年目の石伊の配球パターンとか、分かりませんから」。
セ・リーグの対戦成績で、阪神に唯一勝ち越しているのが中日。無論、リーグ優勝争いは大切だが、3位以内に食い込めば短期決戦に臨める。「阪神でも、CSで当たるとなったら不気味だと感じると思います」。
猛虎が独走する展開は変わるのか。勝負どころの夏が本格化する。
(西村大輔 / Taisuke Nishimura)