プロは人気なのに…韓国でも深刻な“野球離れ” 子どもが「気軽に始められない」ワケ

青森山田シニア相手に快勝した韓国の強豪・紫陽中【写真:川浪康太郎】
青森山田シニア相手に快勝した韓国の強豪・紫陽中【写真:川浪康太郎】

韓国・華城市で「京畿道アジアカップ野球大会(U15)」初開催

 海外の野球に触れることで、国内の野球界を発展させるためのヒントが見つかるかもしれない。7月9~14日、韓国・華城市で国際大会「京畿道アジアカップ野球大会(U15)」が初開催された。韓国の9チームと日本、中国、台湾の各1チームずつの計12チームが参加。韓国で開催される中学生年代の国際大会は例が少ないといい、3年前から調整を続け今年ようやく実現した。海外チームとの交流は韓国のアマチュア球界に何をもたらすのだろうか。

「国内の野球人気が高まっている一方、野球の競技人口は減り続けている。野球界を発展させて競技人口を増やすのが今後の課題だと思っています」。今大会を主催した京畿道野球ソフトボール協会会長の金在哲氏は、そう危機感を募らせた。競技人口減少が喫緊の課題であることは日本の野球界と同様のようだ。また、大会事務局長の李泰熙氏は「韓国では最初から本格的にプロ野球選手を目指して野球を始める子どもがほとんどなので、気軽に始められない」とも指摘する。

 近年、韓国では韓国プロ野球(KBOリーグ)の人気が高まっており、昨年は年間の観客動員数が初めて1000万人を突破した。今年も昨年を上回るペースで、野球観戦が国民的娯楽となりつつある。

 一方、「プロ志望」を前提とするがゆえに競技を始める上では敷居が高くなっているのも事実。李氏は「(韓国発祥のスポーツである)テコンドーのように、気軽に始められるようにすることが競技人口増加につながるのではないかと思っています」と話す。

レセプションで記念撮影に臨む金在哲会長(後列中央)ら大会関係者【写真:川浪康太郎】
レセプションで記念撮影に臨む金在哲会長(後列中央)ら大会関係者【写真:川浪康太郎】

金在哲会長が込める期待「一個でも良いので何かを学んで」

 そんな中で開催された「京畿道アジアカップ野球大会」。今大会の参加者はすでに野球を始めている子どもたちだが、金氏は「韓国の選手たちには、海外チームとの対戦を通じて一個でも良いので何かを学んで、自分のものにしてもらえたら嬉しい」と期待する。

「何か」の例として挙げたのが日本チームの「礼儀」。海外の野球に触れることで、プロを目指すこと以外のモチベーションや気づきを得られる。大会を観戦したこれから野球を始める子どもが、固定観念にとらわれない新しい野球を知るきっかけにもなる。そんな期待が込められた大会だ。金氏は「今年大会を成功させて、来年以降も継続して開催したい」と意気込んでいた。

 今大会に参加した韓国の9チーム中8チームは中学校単位のチーム(部活動)だったが、近年はクラブチームも増加傾向にあるという。競技人口を増やすため、さまざまな試行錯誤が続く。そして、海の向こうでも野球は日々アップデートされていく。

(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)

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