大谷翔平の“異変”の裏で…専門家が懸念「苦しくなる」 偏る配球、復帰プランに影響

初回先頭打者に初球のストレートを二塁打され、1死後に先制適時打献上
【MLB】レッズ 5ー2 ドジャース(日本時間31日・シンシナティ)
先発投手として責任投球回数の5回以上を担う“本格復帰”への壁は、意外に高いかもしれない。ドジャース・大谷翔平投手は7月30日(日本時間31日)、敵地でのレッズ戦に先発したが、4回途中5安打2失点で降板。この日を含めて4イニングずつ2試合投げた後、いよいよ5回以上の段階へ進むプランだったが、暗雲が垂れ込めた。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が分析する。
大谷が予定イニングの半ばで降板した理由は、右臀部の痙攣(けいれん)にあった。本人は初回から異常を感じていたという。まず新井氏が首をかしげたのは、あまりに極端な球種の偏りだった。
初回に投じた15球の内訳は、ストレート8球、スライダー6球。2回は20球中スライダーが17球、ストレートが3球とスライダー一辺倒に近い極端な配球となった。
初回にいきなり、先頭のキャビン・ラックス内野手に初球の156キロのストレートを左線二塁打され、1死後には、3番のエリー・デラクルーズ内野手に154キロの速球を中前へ弾き返され、先制点を献上した。とはいえ、「ラックスの二塁打は、初球のストレートに“1、2、3”でタイミングを合わされたもので、しかたがない。デラクルーズの適時打もインローのストレートで詰まらせてはいました。ストレートの球威に問題はなかったように見えました」と新井氏。それだけに、2回の極端なスライダー多投が解せなかった。
右打者の外角低めや左打者の膝元に決まれば、空振りを取れる確率の高いスライダーだが、これだけ多投していれば、精度の低い球も混じる。「少し投げ損なうと、危険な球になる球種です」と新井氏。2回1死から7番のスペンサー・スティーア内野手に外角低めのスライダーを左前打され、2死後、9番のサンティアゴ・エスピナル内野手にも、スライダーが真ん中高めに浮いたところを左前打された。
しかも、今季の投手復帰後に多投する試合もあったシンカー、スプリットは、2回まで1球も投げていなかった。右臀部の異常が、ストレートやスライダーと同様の腕の振りを求められるシンカー、スプリットを投げることをためらわせたようだ。
4回にはシンカーが2球連続で暴投に…カウント2-0で交代
3回には初めてシンカー、スプリットをまじえて3者凡退に仕留めた。しかし4回にはそのシンカーが2球続けて暴投となるシーンがあり、無死一、三塁、打席のスティーアのカウントが2-0となったところで、降板を命じられた。今季投手復帰後、1イニング投球2試合→2イニング投球2試合→3イニング投球2試合を無難に抑え、順調にステップを踏んできた大谷だが、責任投球回数を前に初めてつまずいたといえる。
「理由はともかく、あれだけ球種が偏ってしまうと、打者としては的を絞りやすくなり、大谷は苦しくなります」と新井氏は指摘する。
また、この日の敵地シンシナティは大変な暑さに見舞われていた。大谷は最近2試合、脱水症状気味だったそうで、新井氏も「そのせいなのか、大谷は立ち上がりからいつになくマウンド上でしゃんとしていなかったというか、冴えない表情に見えました」と語る。
新井氏はもともと「2度の手術を経ただけに、投手としての調整には球団も、現場首脳陣も、本人もなおさら慎重にならざるをえない」と見ている。休養を挟むなどの方策が今後施される可能性もありそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)