酷暑が選手宣誓にも“余波” 夏の甲子園で変わった風物詩…短縮された「1分12秒」の真意

智弁和歌山の山田希翔主将「東日本大震災以降、長くなっていた」
第107回全国高校野球選手権大会が5日、甲子園球場で開幕した。暑さ対策の一環で、今回の開会式は夕方の午後4時から行われ、選手宣誓も大幅に“短縮”された。
選手宣誓は智弁和歌山の主将が2年連続で務めた。昨年の辻旭陽主将に続き、組み合わせ抽選の際に今年の大役を引き当てた山田希翔主将(3年)は「去年のキャプテンが引いた時にもびっくりしましたが、まさか今年も自分が引くとは考えていませんでした」と感慨深げだった。
大役を務めた山田は「宣誓。私たちは人々の心に大きな感動を届けたいと思います。自然環境や社会の状況が変化していく中で、高校野球のあり方も問われています。しかし、その魅力は変わりません」から始まり、「令和7年8月5日、選手代表、智弁学園和歌山高等学校野球部主将、山田希翔」で締めるまで、全文を1分27秒でまとめた。
開会式終了後、報道陣の前で「端的に、わかりやすくを心掛けました。東日本大震災発生以降、選手宣誓は長く、ストーリー性のあるものになってきましたが、自分は90秒以内にまとめることを意識し、選手宣誓の形をもう1回、ここからつくっていきたいという思いでやりました」と説明した。
確かに、高校野球の選手宣誓は、昭和の時代には「宣誓、われわれ選手一同は、スポーツマンシップに則り、正々堂々プレーすることを誓います」程度のもので、非常にシンプルかつ短かった。だが、2010年代以降は毎年“ロングバージョン”となっていた。ちなみに昨年の辻主将の選手宣誓は2分39秒で、今年は1分12秒“短縮”されたことになる。
夏の甲子園は2023年、5回終了後に体を冷やしたり水分を補給したりする“クーリングタイム”が導入されるなど、近年は様々な暑さ対策が講じられている。今回も最も暑い時間帯を避け、午前の部(午前8時開始の第1試合と、10時半開始の第2試合)と午後の部(午後4時15分開始の第3試合と、6時45分開始の第4試合)の“2部制”を実施する日を増やしている。
「昨日は寝ないで何百回、何千回と練習しました」
選手宣誓の時間短縮も、結果的に暑さ対策になったと言える。
もっとも、時間は短縮したとはいえ、山田希主将が「昨日は寝ないで、何百回、何千回と練習してきました」と明かしたように、思いと努力が詰まっていた。
内容的には「温暖化などの自然環境の変化、多様化などの社会状況の変化はあっても、365日必死に野球をやってきた成果をこの夏に懸ける高校球児の姿は永遠に変わらない、という部分が一番言いたかったところです」と語り、「昨日のリハーサルは言葉に詰まってしまい、時間的にも長くなってしまい0点でしたが、きょうは100点かなと思います」と口元を綻ばせていた。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)