キャッチボールには「野球の全てが凝縮」 51年目で初全国…1点差を勝ち抜く“球際強化策”

杉山雄介監督(左)と清水リトルモンキーズナイン【写真:間淳】
杉山雄介監督(左)と清水リトルモンキーズナイン【写真:間淳】

マクドナルド・トーナメントに初出場する静岡・清水リトルモンキーズ

 磨き抜いた守備力が創部初の全国大会出場へつながった。静岡市で活動する学童野球チーム「清水リトルモンキーズ」は、8月11日に開幕する「高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント」に初出場する。普段の練習では守備に時間を割き、球際の強さやキャッチボールの精度を磨いている。

 選手と監督の真剣勝負――。清水リトルモンキーズの強さはノックに凝縮されている。チームを指揮する杉山雄介監督は、選手の気持ちを揺さぶるように、グラブが届くか届かないか、絶妙な場所にノックを打つ。

「選手は捕球できないことに悔しさを感じて、『次こそは』とチャレンジする気持ちが芽生えます。捕球できた時は、うれしさや達成感があります。最後まであきらめずに食らいつく習慣が守備力を向上させ、試合の勝負所にも生きてくると考えています。極端に言えば、そこで選手の人生が変わると思っています」

 魂がこもった杉山監督のノック。選手たちは脚力をフルに使い、目いっぱい体を伸ばしてボールをグラブに収めようとする。指揮官が観察するのは野球に対する選手の取り組み方。仮にグラブから打球がこぼれても、自分の限界を超えようとする姿勢が表れていれば、大きな声で称える。一方、途中であきらめるような動きが見えた時は、厳しく指摘する。

「ノックが好き」と話す杉山監督は、自身も清水リトルモンキーズで野球を始めた。静岡高校から中央大学に進み、静岡ガスで36歳まで現役を続けた。守備力を強化するノックは、自身のキャリアがベースとなっている。

「捕れるか捕れないかギリギリのところにノックを打つと、球際に強くなる動きが自然と身につきます。下半身の強さが足りなくて打球に追いつけないと気付けば、上手くなりたい選手は自主的に足腰を鍛えようと考えます」

様々な守備やキャッチボールのメニューに取り組む【写真:間淳】
様々な守備やキャッチボールのメニューに取り組む【写真:間淳】

日頃の練習の成果…キャッチボールクラシックで優勝

 この守備力で、今年はマクドナルド・トーナメントの出場権を手にした。チーム創設から51年目で初めての全国大会出場となる。代表を決める県大会では5試合中、4試合が1点差勝利。決勝戦は1-0で勝ち切った。

 守備練習ではノックに加えて、キャッチボールも大切にしている。杉山監督は「キャッチボールには野球の考え方の全てが詰まっていると思っています。自分勝手に投げると送球に表れますし、捕球する側も真剣にならないとエラーしてしまいます」と語る。キャッチボールのメニューは豊富で、「ショートボール回し」も定番の1つ。塁間の半分の距離でダイヤモンドをつくり、目標タイムを設定してボールを10周つなぐ。握り替えのスピードや送球の際のステップ、さらに捕球体勢が悪かった時でも相手が捕りやすい球を投げる意識も身につくという。

 日頃のキャッチボールの成果は7月に開催された「キャッチボールクラシック静岡大会」でも表れた。7メートルの距離で9人が交代でキャッチボールして、回数を競う大会に出場。2分間で捕球回数109回の記録を残し、清水リトルモンキーズは小学生の部で優勝した。大会に向けて特別な練習をしたわけではなく、普段通りキャッチボールをした結果だった。

 初出場するマクドナルド・トーナメントでは、初戦の相手が「西埼玉少年野球」(埼玉)に決まった。全国の舞台だからといって、特別なプレーや意識は必要ない。日頃の練習で磨いてきた守備力を披露できれば、自然と勝利に近づく。

(間淳 / Jun Aida)

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