甲子園2部制で生まれる“差” 現場が実感するナイターの恩恵…球児が向き合う酷暑

グラウンドで倒れる仙台育英・田山纏【写真:加治屋友輝】
グラウンドで倒れる仙台育英・田山纏【写真:加治屋友輝】

昨年から導入された朝夕の「2部制」

「午前の部」と「夕方の部」の“環境格差”は決して小さくなさそうだ。第107回全国高校野球選手権大会は6日、大会2日目が行われ、午前・夕方の「2部制」で全4試合が行われた。昨年の第106回大会から試験的に導入された「2部制」。実際に経験している選手たちからは、ナイターの“恩恵”を口にしている。

 今大会初めて、午前中に試合が行われたこの日。第1試合では仙台育英(宮城)と鳥取城北が対戦したが、試合開始の午前8時時点で気温は既に31度を超えていた。酷暑の影響は試合後半に表れた。7回には仙台育英の川尻結大捕手(3年)が足を攣り途中交代。8回には同じく仙台育英の田山纏(まとい)外野手(2年)が足を痛めて動けず、担架で運ばれる事態に陥った。

 また、第2試合では開星(島根)の1番打者・小村拓矢(3年)外野手が8回の打席で足を攣り、そのまま代打が送られ途中交代となった。一方で、昨年の“反省”を活かし、この日の「午前の部」で唯一、試合中の離脱者を出さなかったのが宮崎商だ。

 宮崎商は昨夏の甲子園1回戦で中京大中京(愛知)と対戦し、投手としても活躍していた中村奈一輝(ないき)内野手(当時3年、現中日)が試合中に足を攣ってしまい、登板回避を余儀なくされた苦い経験があった。橋口光朗監督は、前年の経験を踏まえ、徹底した水分補給、充分な睡眠・食事、サプリの摂取など、日頃から対策を徹底してきたという。

 一方、「夕方の部」のナイター開催への印象は好意的だ。6日の第3試合、金足農(秋田)と沖縄尚学の一戦は午後4時15分に開始。一塁側アルプス席から声援を送った金足農の応援団長を務める石井邦茂さん(3年)は、昨年に日中の応援も経験しており、「応援席も日陰になるので、涼しくて応援しやすい」とうなずいた。

 プレーをする選手はどう感じたか。5日に行われた創成館(長崎)と小松大谷(石川)による開幕戦は午後5時半に試合開始。内野は完全に日陰で覆われた。開幕戦で完投勝利を収めた創成館の森下翔太投手(3年)は、153球を投じながらも「涼しくなるにつれて疲れも感じなくなってきた」と、ナイター開催の恩恵を受けていたことを明かした。

 負ければ終わりの一発勝負。試合中の選手離脱は大きな痛手になる。勝負の分かれ目は思わぬところに潜んでいるのかも知れない。

(井上怜音/ Reo Inoue)

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