健大高崎がプロ注目・石垣元気を“温存” 監督が明かす理由、剛腕エースが漏らした本音

健大高崎・石垣元が7回から登板し無失点に抑えた
第107回全国高校野球選手権は13日、大会第8日目が行われ、第1試合は健大高崎(群馬)が夏連覇を目指す京都国際と対戦し3-6で敗れた。7回からはエースの石垣元気投手(3年)が救援登板し、150キロ台の直球を連発したが、序盤の失点を最後まで埋められず初戦突破はならなかった。
3点を追う7回、やっとエースの出番がやってきた。健大高崎は下重賢慎選手(3年)、山田遼太選手(3年)、佐藤龍月選手(3年)と3人の投手リレーで6回まで6失点。石垣元は4番手として7回から登板。名前がコールされると、最速158キロ右腕の登場を待ちわびた観客からは大きな拍手が沸き起こった。
先頭への初球でいきなり153キロを投じると、2球目は154キロ。カウント2-2からの5球目は155キロを計測。甲子園最速タイをマークすると聖地はどよめきに包まれた。2イニングを2奪三振無失点に抑える好投を見せたが、京都国際の西村一毅選手(3年)の前に打線が沈黙。昨春の選抜優勝に貢献した右腕の夏は初戦で幕を閉じた。
なぜエースを先発させなかったのか――。ここまで健大高崎は継投で戦ってきた。群馬県大会決勝でも下重、佐藤、石垣元の継投でタイブレークを制した。この日の采配について青柳博文監督は「後半勝負になると思っていました。下重のゲームを作れる良さと佐藤の球威、最後は石垣がタイブレークも見据えていました」と説明した。
青柳監督「出力が高い分、故障のリスクが高い」
「投げたいという気持ちはもちろんありましたが、信頼できる投手陣がいるので」。石垣元にも後悔はない。健大高崎はどの投手も高いレベルを誇る。だからこそ仲間に託す覚悟だった。とはいえ、初回からいけるところまで自分の力を試してみたい気持ちも少なからずあった。
「先発で行きたいなという思いはありましたが、勝つためなら自分の役割を全うするだけなので……。自分が後ろにいたほうが他の投手も安心して投げられるという事でした。でも先発したかったなという思いはありました」
継投策は勝つためだけが目的ではない。青柳監督は「トレーナーや病院の先生から出力が高い分、故障のリスクが高いと言われていました。あの子の出力がデカ過ぎますね」と明かす。
どれだけ威力のある球を投げられても、まだ高校生。「100球を超えて投げるのはまだ負担がかかりすぎるので……。体と出力のバランスが合っていない。将来的には先発完投のピッチャーになってもらいたい」と指導者としての責任とさらなる成長への期待を口にした。
「石垣の成長のおかげで甲子園にも出られた。石垣とともにチームとしてもやってこられた。他の選手も良かったので優勝したかったですが、簡単にはいきませんでした」。指揮官は反省とともに、石垣元への感謝の言葉を紡いだ。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)