大谷翔平らがつけた“出世番号”に「自分でいいのか」 2年生左腕が背負った「17」の重圧

花巻東・萬谷が17番を背負い躍動した
第107回全国高校野球選手権は15日、大会第10日目が行われ、花巻東(岩手)は2回戦で東洋大姫路(兵庫)に4-8で敗れた。17番を背負い先発した萬谷堅心(まんや・けんしん)投手(2年)は5回を被安打5、4四球、3奪三振、4失点(自責1)の熱投を見せるも及ばず。“出世番号”を背負って臨んだ夏だったが「期待に応えられなかった。3年生に申し訳ない」と涙を堪えた。
1回戦では156球完投と圧倒的な投球を披露したが、この日は制球が定まらなかった。初回に味方のエラーが絡み先制を許すと、3回には四球で出した走者を4番・白鳥翔哉真外野手(3年)に適時二塁打で還され0-2に。4回は2死満塁のピンチを無失点に凌いだものの、5回に2点を追加され降板となった。「コースに投げ切れませんでした。力負けでした」と肩を落とした。
それでも堂々と躍動した夏だった。岩手大会決勝では9回126球を投げ切り、完投勝利で聖地への切符を掴んだ。甲子園大会からは「14」から「17」に背番号を変更。初戦では、優勝候補のひとつに挙げられていた智弁和歌山相手に9回1失点の完投勝利を挙げていた。
花巻東の「17」と言えば、エンゼルスの菊池雄星投手や、ドジャースの大谷翔平投手も下級生の時に背負ったことで“出世番号”とされる背番号。他にも佐々木麟太郎内野手や、巨人の西舘勇陽投手も背負ってきた。佐々木洋監督も「将来性を見て期待している選手にあげています」と頷く。
部員にとっても特別な背番号。だからこそ、今までとは違う感覚もあった。「緊張しました。自分でいいのかなと思いましたし、プレッシャーも感じていました」。それでも「素直に嬉しかったです。貰ったからにはやり切ろうと、監督さんの期待に応えたられるように頑張ろうと思いました」と前を向いて臨んだ夏だった。
昨夏は金ケ崎高校で大会に出場していた
今でこそ名門のマウンドを託される存在だが、実は昨夏は花巻東ではない“別の高校”で出場していた。部員が5名のみだった岩手県立金ケ崎高校は、近隣の高校から部員を借りて大会に出場することを認める「単独廃校ルール」を利用。花巻東が協力し、萬谷ら5選手が加わることになった。
萬谷は佐々木監督から、花巻東としては夏のメンバーに入らないと告げられたタイミングで、別の高校で出る機会があることを知った。「1年生からは(メンバーに)入れるとも思っていなかったですし、自分としては夏が経験できて成長できるなら」と“異例”の提案も迷わず引き受けた。
「最後の夏はどのチームも食らいついてくる。夏の雰囲気を感じる事ができました」。花巻東ではできなかった経験を力に変え、背番号を掴んだ。「期待には応えられなかったと思うので、あと1年、背番号が変わったとしても更に良い投手になりたいです」。
背番号の重圧を背負いながら力を貰った2年目の夏。来年は「1番をつけたい」。偉大な先輩に負けない程、大きな背中で戻ってくることを誓った。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)