山梨学院“2年生Wエース”の熱い関係 お互いがいたから…聖地に誓ったひと夏の約束

山梨学院・菰田陽生(左)と檜垣瑠輝斗【写真:加治屋友輝】
山梨学院・菰田陽生(左)と檜垣瑠輝斗【写真:加治屋友輝】

準決勝で沖縄尚学に逆転負け「思わぬアクシデントが起きた」

 苦杯をなめた山梨学院の“ダブル2年生エース”は、来夏こそ頂点を目指す──。第107回全国高校野球選手権大会は21日、夏の甲子園初制覇を目指した山梨学院が沖縄尚学との準決勝で4-5の逆転負けを喫した。

 誤算だった。吉田洸二監督は試合後、「思わぬアクシデントが起きて、全く想定していなかった展開になりました」と明かした。

 山梨学院の先発は、194センチの長身から投げ下ろす最速152キロの剛速球が武器で、今大会絶好調の菰田陽生(こもだ・はるき)投手(2年)。ところが、初回無死一塁で相手の2番打者に対するスライダーがワンバウンドの暴投となった際、右肘に痛みが走った。吉田監督は「その瞬間、私には肘をやったことわかりました。伝令を出して確認したところ、やはり肘を痛めたとのことでした」と説明する。

 結局、この後相手の4番に適時打を浴び先制の1点を献上。菰田はこの回限りでマウンドを降り、一塁守備に回った。代わりに2回から登板したのが、同級生の左腕・檜垣瑠輝斗(ひがき・るきと)投手だった。こちらはカットボール、スライダーなどを駆使して2回から5回まで、スコアボードに「0」を並べる。その間に打線が3点を奪い、4-1と優位に試合を進めた。

 しかし6回裏、2本の二塁打、シングルヒットに味方のエラーも絡み、一気に3失点。7回には左翼フェンス直撃の三塁打と適時打で、決勝点を奪われてしまった。この日7イニング、108球を投げた檜垣は「技術不足です」と肩を落とした。一方、吉田監督は「本当は5回まで菰田、残りの4イニングを檜垣に任せるゲームプランでしたが、しょうがない。選手はよく粘ったと思います」と語ったが、諦め切れない表情にも見えた。

 もともと、山梨県大会では檜垣がチーム最多の計15回1/3を投げ、投手陣を牽引。一方、菰田は調子が上がらず、わずか4イニングしか投げられなかった。甲子園に来ると、菰田の剛速球がうなりを上げ、全4試合に先発し一躍全国から注目を浴びる存在に。檜垣も全試合にリリーフ登板し、役割を果たした。

「本当に申し訳ない」と言った菰田、「ありがとう」と返した檜垣

「投手交代の時、菰田から『本当に申し訳ない』と言われましたが、『今までこんなに投げてくれて、ありがとう』と返しました。『あとは俺が抑える』と言ったのですが……援護できず、こっちこそ申し訳ないです」と檜垣は吐露した。

 チーム内でエースの座を争い、切磋琢磨してきた菰田と檜垣。相手の沖縄尚学も、左腕・末吉良丞投手(2年)と右腕・新垣有絃投手(2年)の2枚看板だった。横浜(神奈川)の最速152キロ右腕・織田翔希投手、聖隷クリストファー(静岡)の左腕・高部陸投手らを含め、今大会は2年生投手の逸材が目立つ。

 ただし、檜垣は「織田とか末吉とかもいますが、自分は菰田が一番いいピッチャーだと思います。一番のライバルで、菰田がいたからこそ自分も成長できたと思います」と強調した。

「自分の力不足で負けてしまったので、もう1回力をつけて、来年2人で夏の聖地に戻ってきたいと思います」と誓った檜垣。「菰田はパワーピッチャー、自分は変化球投手で持ち味が違い、いい関係だと思いますし、相手にとっては嫌だと思います」と付け加えた。

 菰田も「来年絶対、この舞台に帰って来て、借りを返したいと思います」と応じた。山梨学院はこれまで、春の選抜大会では2023年に優勝、翌2024年にもベスト8入りを果たしながら、夏の選手権では2勝以上したことがなく、“夏に弱い”イメージだった。来年こそ払拭して見せる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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