なぜ日大三ナインは相手アルプスにも一礼? 綿々と継がれる“文化”「応援があっての自分たち」

準優勝の日大三が試合終了後、全方向に挨拶をした
礼に始まり礼に終わる。第107回全国高校野球選手権大会は23日に決勝戦を迎え、日大三(西東京)が沖縄尚学に1-3で敗れ14年ぶりの栄冠に手は届かなかった。試合終了後、号泣するナインはアルプススタンドへ挨拶をした後、外野席と沖縄尚学側にも頭を下げる姿があった。
試合は1点を争う投手戦となった。日大三は先頭の松永海斗外野手(3年)が内野安打で出塁し、1死二塁の場面で本間律輝外野手(3年)に適時二塁打が飛び出し先制に成功。投手陣は3人のリレーで3失点に抑えたものの、初回以降沖縄尚学の新垣有絃投手、末吉良丞投手ら2人の2年生投手陣の前に沈黙した。
試合終了の瞬間、涙が止まらなかった。沖縄尚学ナインとホームで挨拶を交わし、相手の校歌を聞き終えると、日大三ナインもうつむきながらとアルプススタンドへ走った。スタンドからは大きな拍手と感謝の言葉が投げかけられる中、深く一礼。さらに、そのまま外野席に向かって一礼、最後には3塁側の沖縄尚学アルプスにも頭を下げた。全てを終わらせた瞬間、力が抜けたように膝から崩れ落ちた。
この挨拶は西東京大会の決勝でも行ってきた。本間主将は「沖縄尚学さんの応援があっての自分たちで、沖縄尚学さんなしではいい試合はできなかったので。感謝の気持ちでいっぱいでした」と理由を明かした。さらに、外野席にも一礼したことについても「自分たちが打ったら大きな歓声や拍手をくれて、凄く力になったので」と思いを語った。近藤優樹投手(3年)は「日大三に入って礼儀や野球以外の部分でも成長できました」と感謝を口にした。
常に相手がいるからこそ喜びや悔しさがある。だからこそ自分がどんな状況でも変わらず貫いた。“礼儀”を重んじ続けた2年半が現れた瞬間だった。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)