専門家が称賛した大谷翔平の「2つの凡打」 3タコでも…大飛球に見えた“兆し”

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

宿敵パドレスとの直接対決に敗れナ・リーグ西地区同率首位

【MLB】パドレス 2ー1 ドジャース(日本時間23日・サンディエゴ)

 ドジャースの大谷翔平投手は22日(日本時間23日)、敵地ペトコ・パークでのパドレス戦に「1番・指名打者」で出場するも3打数無安打1四球。チームも1-2で敗れ、宿敵のパドレスにナ・リーグ西地区で同率首位に並ばれた。パドレス先発のダルビッシュ有投手に持ち味を封じられた格好だが、現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏は、大谷の打撃を「次の打席ではいいものを見せてくれるのではないか、と期待を抱かせるに十分な内容だったと思います」と高く評価した。

「確かに結果は出ませんでしたが、打ち損じは第1打席の一ゴロだけ。それ以外の打席の内容は決して悪くなかったと思います」と新井氏は指摘する。

 初回の第1打席はカウント2-2から、真ん中の141キロのスライダーをとらえ切れず、一ゴロに倒れた。新井氏は「相手のダルビッシュは同じスライダー系でも、曲がりの大きいスイーパー(130キロ台)、曲がりの小さいスライダー(140キロ前後)、カットボール(140キロ台後半)と球速帯も違う3種類を使い分けています。この打席では先にスイーパーを2球見せられていた分、小さいスライダーに対して『ストレート系が来た』と判断し、早く反応し過ぎてしまったのだと思います」と分析する。

 3回1死一塁での第2打席は、ダルビッシュが内角いっぱいに投じた初球の148キロのカットボールを打ち、右直。結果はともかく、新井氏が「厳しいコースだった分、バットのやや手元気味に当たり打球が上がりませんでしたが、腕をたたみ、鋭い体の回転でいい当たりを飛ばしました」と称える打撃だった。

 6回1死走者なしでの第3打席は四球。そして最後の第4打席は、1点ビハインドで迎えた9回先頭。2020年と2021年に阪神の守護神として活躍し、今季はナ・リーグトップのセーブ数を稼いでいるロベルト・スアレス投手との対戦となった。

本塁打が出にくいと言われるペトコパークのウォーニングゾーンまで下がった中堅手

 チェンジアップを2球見逃し、カウント1-1となった後、3球目の外角高めの158キロ速球を一閃。打球はバックスクリーンへ向かって高々と舞い上がったが、ウォーニングゾーンまで下がった中堅手のグラブに収まった。海風の影響で本塁打がでにくいと言われるペトコ・パークでなかったら……とも思わせる一撃だった。

「投球がもう少し低いか、もしくはもう少し内寄りに来ていれば、フェンスを越えていたと思います。ホームランにするには非常に難しい高めの速球を、あと少しというところまで持っていったことを前向きにとらえるべきだと思います」と新井氏。そして「第2、第4打席の凡打は、状態のいい時の大谷の形ができていたと思います」と総括した。

 ダルビッシュは6回1安打1失点で3勝目(3敗)。これでドジャースとパドレスはナ・リーグ西地区の首位に並んだ。今季の対戦成績はドジャースの8勝3敗で、残る直接対決は翌23日(日本時間24日)、24日(同25日)の2試合だけ。ドジャースの勝ち越しは決まっており、仮に同率首位のままシーズンを終えた場合は、ドジャースの地区優勝となる。

 だが、昨季ワールドチャンピオンに輝いたドジャースが、ポストシーズン最初の地区シリーズでパドレスに先に“王手”をかけられ、何とか3勝2敗で勝ち切ったように、両者の実力は拮抗。新井氏は「今季も戦力は五分五分。ポストシーズンで対戦した場合の勝敗は、いかに怪我人の少ない、いい状態で臨めるかにかかっていると思います」と見る。

 ともかく、大谷としては残るレギュラーシーズンの直接対決で、相手に恐怖を植え付ける一撃を見舞いたいところだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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