打者走者の一塁駆け抜け…ベースのどこを踏む? 慶大生が中学生に伝授した“新常識”

中学生に指導する慶大・外丸東眞主将【写真:宮脇広久】
中学生に指導する慶大・外丸東眞主将【写真:宮脇広久】

ドラフト候補の外丸東眞ら…慶大4年生9人が桐生市の中学3年生65人を指導

 慶大野球部が、半年後から高校野球を始める中学3年生を対象に野球教室を開いた。今秋のドラフト候補で主将の外丸東眞投手をはじめ、4年生選手9人が8月26日に群馬県桐生市の小倉クラッチ・スタジアムを訪れ、地元の中3生65人を指導した。参加選手は市内の2つの硬式野球チーム、3つの軟式チームのいずれかに所属しており、基本的に高校の硬式野球部でプレーすることを志している。

 慶大野球部はこれまでシーズンオフに、中学生だけでなく小学生や高校生を対象とする野球教室も開いてきた。学生コーチを務める金岡優仁選手は「小学生の場合はバットを強く振る力がまだなかったりするので、野球を楽しいと思ってもらうことを主眼に置きますが、中学生に対して僕らが手加減してしまうと、彼らは面白くない。ちゃんと野球を教えること、自分たちが教わっていることをそのまま教えることを心掛けています」と語る。

 実際、“走塁教室”では慶大選手から「打者走者が一塁を駆け抜ける時、ベースのどの部分を踏むか?」と問いかけがあった。これはチームによって考え方に違いが見られ、時代によっても変化しているところで、「(ホームから見て)右手前の角」という声もあった。だが、慶大側の答えは「ベースの真ん中から手前側」で、「ベースの角を踏むと足首を捻挫しやすく、塁審から見てベースを踏んでいるかどうかが判断しづらい」といった理由が示された。

 一方、「一塁をオーバーランして二塁へ向かう際には、一塁ベースのどこを踏むか?」との問いに「左手前の角」と教わってきた中学生もいたが、慶大側の答えは「ベースの(手前の)側面」。右翼ポール方向へ真っすぐ走ってきた勢いを、ロスなく二塁方向へ変換するのに適しているという。

 東京六大学の今春リーグで「3番・中堅」としてスタメン出場していた常松広太郎外野手は「スローイングが大事」と説いた。「捕球能力にはそれほど差が出ません。捕手や遊撃手ができるくらいスローイングを磨いておけば潰しがきくというか、他のポジションもこなせて長く楽しい野球生活を送れると思います」と説明した。これも高校で活躍する上で、実戦的な秘訣の1つと言えるだろう。

 外丸は「コントロールが定まらないとか、変化球が曲がらないなどの悩みを聞き、自分が知っている限りのアドバイスをしました。彼らは高校に入る前段階で、まだ体が大きくない子も多いので、焦らず目の前の課題を潰していくことに集中してほしいと伝えました」と語った。

中学生と共にベンチ内に腰を下ろし“座談会”も行われた【写真:宮脇広久】
中学生と共にベンチ内に腰を下ろし“座談会”も行われた【写真:宮脇広久】

「高校で通用する技術を教わりたくて参加しました」

 教わった「桐生南ポニーリーグ」の田村遥都選手は「高校で通用する技術を教わりたくて参加しました」と語り、「投手が上げた足を下ろすのに合わせてタイミングを取るといいと教わりました」と満足げに話した。

 また、金岡は「中3生は思春期で恥ずかしがり屋の子が多いので、コミュニケーションを取るのは簡単ではないですね」と述懐。「自分が中3の頃の、親の気持ちがわかりました」と苦笑。常松も「他人の陰に隠れようとする子が多いですね」と同感だった。

 そんな中、外野の芝生部分で慶大選手を中心に車座になったり、ベンチ内に腰を下ろしたりしながら、プライベートなことを含めた質問コーナーや“座談会”が開かれる一幕もあった。

 そこでは「慶大野球部の雰囲気は?」「遠投は何メートル行けますか?」といったものから、「彼女はいますか?」「いつから付き合っているのですか?」といった質問も飛び、慶大の選手たちも率直に答えていた。野球に直接関係はなくても、決してふざけているわけではなく、これも思春期の中3生にとって重大な関心事なのだろう。

 中3生を引率してきた桐生南ポニーリーグの山口洋介ヘッドコーチは「高校入学までの残り半年で何をすべきか。それを考えるきっかけになってくれるといいですね」と祈るような表情だった。大学の現役野球部員が手加減せず“等身大”で送ったアドバイスは、ヒントにあふれていたはずだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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