大谷翔平の「勝負弱い」は事実? 得点圏で打率.244&6HRも…覆す最強数値“4.94”

ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】
ドジャース・大谷翔平【写真:ロイター】

大谷は得点圏打率.244…4月は得点機での本塁打0本

 ドジャース・大谷翔平投手は8月を終えてリーグ2位の45本塁打を放ち、OPS.986はリーグトップ。今季も打者として圧倒的な存在感を示している。一方で85打点は7位にとどまっており、「勝負弱いのでは」との声も一部のファンから上がっている。果たして本当に“大事な場面”で結果を残せていないのだろうか。

 勝負強さを語る際、しばしば使われるのが「得点圏打率」だ。今季の大谷は.244で、規定到達77人中60位。ほぼ全ての打撃指標で上位に位置することを考えれば、数字上はやや物足りなく映る。実際、シーズン序盤は“タイムリー欠乏症”に悩まされ、初の適時打は4月16日(日本時間17日)のロッキーズ戦。4月の得点圏成績は17打数2安打の打率.118、本塁打0本に終わった。

 5月以降は一転して本塁打量産モードに突入。5月8日(同9日)の敵地ダイヤモンドバックス戦で11号を放つと、その後は長打や総塁打でリーグ上位に食い込んだ。ただ米データ会社「オプタ・スタッツ」によれば、「5月以降で本塁打、長打、総塁打がトップ5に入りながら、打点で90位以下に沈んだのは1920年以降で初めて」とされ、特異な数字が大きな話題を呼んだ。

 しかし、「勝負強さ」を単純に得点圏打率だけで測るのは難しい。例えば10-0の大差で放った適時打と、9回に放ったサヨナラ本塁打はいずれも「1打点」だが、試合に与えるインパクトはまるで異なる。そうした状況を加味し、打撃の“価値”を測る指標が「WPA(Win Probability Added)」である。

 WPAは打席やプレーが勝敗にどれだけ直結したかを数値化するもの。大差の試合ではほぼ加点されない一方で、同点の勝ち越し打やサヨナラ弾は大きく評価される。例えば8月31日(日本時間9月1日)、ドジャースはウィル・スミス捕手のサヨナラ弾で勝利を収めたが、この一打は得点圏打率には反映されない。それでもWPAでは「最高のプレー」として記録されている。

 そして今季、このWPAでメジャー全体トップに立っているのが大谷だ。4月2日(同3日)のブレーブス戦での劇的なサヨナラ弾をはじめ、計10本の先頭打者本塁打も同点や0-1の劣勢を跳ね返す“価値ある一発”ばかり。今季のWPA「4.94」は同僚フレディ・フリーマン内野手(4.70)、ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(4.34)を上回り堂々の1位だ。

 得点圏打率だけを切り取れば「勝負弱い」と映るかもしれない。だが、試合の流れを変える一打を繰り返してきたのもまた大谷の姿である。結論は明白――大谷翔平は間違いなく“勝負強い打者”だ。

(新井裕貴 / Yuki Arai)

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