イチロー、“突然の沈黙”の真相 感極まったの声も「全然違うんですよ」、明かした哲学

花束を受け取るイチロー氏【写真:荒川祐史】
花束を受け取るイチロー氏【写真:荒川祐史】

女子選抜とは「ボロボロになるけど全力でやりたい」

「SATO presents 高校野球女子選抜 vs イチロー選抜 KOBE CHIBEN」が8月31日、バンテリンドームで行われた。「1番・投手」として9回1安打完封するなど躍動したイチロー氏は、試合後のグラウンド上でのインタビューで、来年以降の試合について問われると「いずれできなくなる日が来るんですけど……」と語り9秒間沈黙した。あのイチロー氏が感極まったかにも見えた“静寂”について、真相を語った。

 女子野球の発展のために毎年行われている真剣勝負は今年で5回目を迎えていた。試合後にはグラウンドインタビューで、野球と真摯に向き合い、心から楽しんでいる高校野球女子選抜の姿勢について言及した。

「女子たちのプレーを見て、そのひたむきなプレーを見て、謙虚さを見て、(イチロー選抜のメンバーは)随分変わったんですね。いいおじさんたちばっかりです。その人たちが、こんなに変われるんだって。女子のプレーを見て、姿勢を見て。だから、僕らいずれそれはできなくなる日が来るんですけど……」

 ここまで一気に話すと、イチロー氏は9秒間沈黙した。バンテリンドームは静寂に包まれた。そして、言葉を続けた。

「それができるだけ先でありたいなと改めて毎回思うんですけど。まあ、こんな風におじさんたちを教育してくれる人たちがいないですから。これはすごいことなんですよ。だからやっぱり女子野球を応援したいなと思ったし、僕らもそれに応えられるようにボロボロになるけど、全力でやりたいなと思いました。ぜひ皆さん、高校野球、男子、女子たちも頑張っています。プロ野球にはない良さももいっぱいあるので、ぜひ応援していただきたいです。ありがとうございました」

「しょうもない言葉で埋めないというのが僕のポリシー」

自身がプレーできなくなる日を思い、感極まったかにもみえたインタビュー。イベント終了後の取材対応で、その真相を明かした。

「全然違うんですよ。頭が真っ白になることあるでしょ? それがやってきたんですよ。それをしょうもない言葉で埋めないというのが僕のポリシーで。あそこは耐えどころだったです。耐えました」

 笑いながら説明した。沈黙について思いが込み上げたのかと、さらに問われたが「全然違う」と笑い飛ばした。常に冷静沈着なイチロー氏の貴重なシーンかと思われたが、10月に52歳となるレジェンドは“涙”を完全否定した。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY