防御率1点台で戦力外→社会人で進化の最速5キロ更新 元ヤクルト31歳の“後悔”「もっと楽に」

元ヤクルトで日立製作所の田川賢吾が都市対抗初戦で3回1安打無失点4K
東京ドームで連発した150キロが進化の証だった。元ヤクルトで日立製作所の田川賢吾投手が2日、第96回都市対抗野球大会の西部ガス戦に登板。5回途中から2番手でマウンドに上がり、3回1安打無失点4奪三振と好投した。プロ時代に148キロだった最速は、戦力外から5年が経った今、153キロを計測する。プロ時代の“後悔”も糧に、31歳にして成長を続けている。
外野まで黄色とオレンジに染まった大応援団の声援を背に、背番号18が思い切り腕を振った。チームは初戦敗退となったが、大舞台で投じた49球に「楽しかったです」と充実の汗を拭う。地区予選では昨年より1キロ上回る153キロをマーク。社会人の5年間で、実に5キロも最速を更新したことになる。
「プロのときは、結果を出さないといけないというプレッシャーを自分でかけていました。結果が出ていなかったので……。社会人に来て、一発勝負ですけどプロのときよりかは自分を責めなくてもよくなったので、それが要因かなと思います。特に(本拠地だった)神宮は狭くてコントロールを気にしながら投げていたけど、今はもう全然関係なく、全力で腕を振れています。プロ時代とはまた違った感じですね」
高知中央高から2012年ドラフト3位でヤクルトに入団。2017年からは育成契約の憂き目に遭い、2018年3月に支配下復帰すると1軍デビューを掴んだ。2019年、プロ7年目でついに初勝利。しかし通算5登板のみで、2020年は1軍登板なく戦力外通告を受けた。当時を振り返り、「メンタル面で、もっと楽に思っておけばよかったなとかあります。でも過去は戻らないので。また同じような失敗をしないように気をつけながら社会人でやっています」と爽やかに笑った。
とはいえ、2020年は2軍で20試合に投げ防御率1.95という数字を残していた。「率直な気持ちで言うと、一度でも1軍で投げさせてほしかったというのはありました」と打ち明けるが、「もう5年も前の話なので。自分のやるべきことはやったと思っていたし、あとは監督が決めることなので操作できないですから」と穏やかな口調で回顧した。
活躍の場を社会人に移し、もう5年目となる。入社当時に掲げていた「プロ復帰」の目標は「3年目くらいに、年齢も上がって自分の立ち位置を考えたときにないなと思って、そこの気持ちはもうなくなっています」と明かす。「今までいろいろなものを犠牲にして野球をやってきたので、今は、最後悔いなく終われたらいいなっていうことを意識して、1年1年やり切って終わりたいと思っています」。ヤクルト時代とはまた違う姿で、変わらず野球に打ち込んでいる。
(町田利衣 / Rie Machida)