松井秀喜氏、イチロー氏とは「距離感あった」 感じていた“すれ違い”…語った急接近の胸中

イベントに登場したイチロー氏(左)と松井秀喜氏【写真:宮脇広久】
イベントに登場したイチロー氏(左)と松井秀喜氏【写真:宮脇広久】

「いろいろ話して、飯も食って酒も飲んで、気持ちいい時間」

 かたや日米通算4367安打を積み上げ米野球殿堂入りも果たしたヒットメーカー、かたや日米通算507本塁打を誇るホームランアーティスト。1歳違いのスーパースター、イチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)と松井秀喜氏(ヤンキースGM特別アドバイザー)が“急接近”している。イチロー氏が率いる野球チーム「KOBE CHIBEN」が毎年行っている高校野球女子選抜との試合に、松井氏が昨年と今年、2年連続で出場したことがきっかけ。今月2日には逆に、松井氏が能登半島地震の被災地である石川県七尾市で開いた少年野球教室にイチロー氏がサプライズで参加した。

 イチロー氏は1991年ドラフト4位でオリックス、松井氏は翌1992年ドラフト1位で巨人に入団しプロ生活をスタートさせたが、2人が現役時代に同じユニホームを着てプレーすることはなかった。イチロー氏が活躍した2006年と2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)にも、松井氏は参加していない。両者が所属したヤンキースにも、松井氏は2003年から2009年、イチロー氏は2012年のシーズン途中から2014年まで在籍し、2つの線は交わることがなかった。テレビ番組で対談したことはあったが、接点らしい接点はなく、並び立つことのない究極のライバル関係というイメージで見られてきた。

 イチロー氏は2日の少年野球教室終了後、「去年、ゲーム(高校野球女子選抜との試合)に来てもらって、いろいろ話して、飯も食って酒も飲んで、今まで滞っていた感じがさーっと流れてね。気持ちいい時間なんですよ、松井選手と一緒にいる時間が」と感慨深げに明かした。

 一方、松井氏も「今思えば、これもご縁だったのでしょうけれど、中学の時に同じ大会に出たことがあり、高校時代も(練習試合で)金沢と名古屋を行ったり来たりしました。そういう時の縁がずっとあった気がします」とうなずく。イチロー氏が愛知・豊山中、松井氏が石川・根上中の時に、同じ中部地方の大会に出場。また、イチロー氏の愛知・愛工大名電高と松井氏の石川・星稜高も練習試合を何度か行っており、両雄が愛工大名電高の寮の風呂場で遭遇したことがあるのは、有名なエピソードだ。

「現役時代は皆さんが勝手にいろいろなことを書くから…」

「現役時代は皆さん(メディア)が勝手にいろいろなことを書くから、お互いは思っていないのに、何となく距離感がありました。ライバルチームでしたから、それも当たり前かもしれませんが」と松井氏。「去年からは、昔からのご縁がよみがえったというか、実は三十何年前から(現在の状況が)見えていたんじゃないかと思っています。だから去年、自然にゆっくり(イチロー氏との)時間を過ごせました」と目を細めた。

 お互いに現役を退き、試合の緊張感やスター選手としての使命感から解放され、若い選手や子どもたちを指導する機会も増えた今、両雄が接近するのは自然の流れだったのかもしれない。

 さらに、イチロー氏は早くも来年の高校野球女子選抜との試合へ向け、「(松井氏は)KOBE CHIBENのレギュラーセンターでやってもらいます」と断言。「これからもゲームだけでなく、こういう野球教室とか、子どもたちや見ている方々が喜んでくれることを、何か一緒にできるんじゃないかなって、そんなことがすごく膨らんできました」と力を込めた。

“イチロー”と“ゴジラ”のコラボとなれば、野球ファンにとってこれほど力強く、ぜいたくなものはない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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