ド軍悪夢の敗戦にあった“3つのなぜ” 専門家も理解できず…指揮官の采配は「混乱を象徴」

オリオールズ戦の指揮を執ったドジャースのデーブ・ロバーツ監督【写真:アフロ】
オリオールズ戦の指揮を執ったドジャースのデーブ・ロバーツ監督【写真:アフロ】

山本由伸が9回2死までノーノー、あと1人で降板後にまさかの逆転劇

【MLB】オリオールズ 4ー3 ドジャース(日本時間7日・ボルティモア)

 ドジャースは6日(日本時間7日)のオリオールズ戦で、山本由伸投手が9回2死までノーヒットに抑えたにも関わらず、救援陣が乱れて衝撃的な逆転サヨナラ負け。5連敗となり、ナ・リーグ西地区で2位パドレスとの差はわずか1ゲームに縮まった。チームの混乱ぶりを象徴するかのように、この試合には数々の疑問符がつけられた。現役時代にNPB通算2038安打をマークし、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が指摘が指摘したのは指揮官の采配と若手の守備だった。

 3-0とリードして9回の守りに就き、既に2死を取って走者なし。山本はここまでオリオールズ打線を無安打2四球に抑えていた。ノーヒットノーラン達成まで、あと1人。左打者のジャクソン・ホリデイ内野手に対し、カウント2-1から内角へ152キロのカットボールを投げ込むと、ホリデイがきれいに捉えた打球はライト方向に舞い上がった。フェンスを越えるか、越えないか、ギリギリのところだった。

 しかし、飛球を追っていた右翼手のアンディ・パヘス外野手は、途中でくるりと本塁方向へ背中を向け、クッションボールを待つ姿勢を取る。飛球は無情にもフェンスを越え、山本の大記録を消滅させる17号ソロとなった。

 ここで新井氏は1つ目の疑問を呈する。「パヘスはなぜ途中で飛球を追うのをやめたのか」だ。フェンス際まで追いかけてジャンプしていたら、ひょっとしたら捕れていたのではないかとも思える飛球だった。

「捕れていたかどうかはともかく、追いつくことはできた打球でした。あの場面は、仮にクッションボールをうまく処理できず、三塁打やランニングホームランになったとしても、試合の流れの中でそれほどの痛手にはならない。ならば、仲間がノーヒットノーランに迫っていたのですから、バックを守るチームメートはフェンスに激突してでも捕ってやろうと考えるのが普通です」と新井氏。「パヘスは適切な状況判断ができていなかったと思います」と断じた。

山本→トライネン→スコット継投のタイミングに残る疑問

 とはいえ、この時点ではまだ2点リードがあり、既に2死走者なし。あと1死を取れば勝利をものにできた。デーブ・ロバーツ監督は投球数が112球に達していた山本から、37歳のベテラン右腕ブレイク・トライネン投手にスイッチしたが、ここで新井氏が2つ目の疑問を呈する。

 大記録を逃し少なからずショックを受けている投手を即交代させる采配は、日米を問わず見られる。しかし、新井氏は「ドジャースの連敗の要因はリリーフ陣の不調にあります。一方、山本は本塁打を浴びる直前の111球目にも158キロの球速をマークしていて、余力がありました。少なくともあと1人は続投させて様子を見るべきだったと思います」と考察する。

 確かに、ドジャースは前日5日(同6日)の同カードでも、1-1の同点で迎えた9回に7番手で登板したタナー・スコット投手がサヨナラソロを浴びていた。また、山本は前回登板だった8月31日(同9月1日)のダイヤモンドバックス戦でも7回を1失点に抑え、4-1とリードした状況で降板しながら、リリーフ陣が追いつかれて勝利投手の権利を失っている。2試合続けて12勝目をリリーフ陣にふいにされた格好だ。

 山本をリリーフしたトライネンは二塁打、死球、暴投、四球を許して満塁の大ピンチを背負い、左の大砲コルトン・カウセル外野手を警戒した挙句、押し出し四球を与え1点差とされてしまう。ロバーツ監督はここに至って左腕のスコットに代えたが、右打者のエマヌエル・リベラ内野手に2点適時打を浴び、逆転サヨナラ負けとなったのだった。

 新井氏の3つ目の疑問は「なぜ左のカウセルを迎えた時点で、左腕のスコットに代えなかったのか」だ。

 スコットには前日、左打者で21歳のルーキーのサミュエル・バサロ捕手にサヨナラソロを浴びていた事情があった。とはいえ、新井氏は「ベテランのスコットとしては、初対戦のバサロとは違い、相手がキャリアのあるカウセルであれば対策もあったと思います」と指摘。「監督の采配も、チームの混乱ぶりを象徴していると思います」と続けた。

 連敗中で精神的に追い込まれたチームには、普段では考えられない判断ミス、采配ミスが起こりがちだ。レギュラーシーズンは残りわずか20試合。ドジャースは昨季ワールドチャンピオンの底力を発揮することができるだろうか。

【実際の場面】「なぜ追うのをやめたか」由伸ノーノー直前…専門家が疑問視したパヘスの守備

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