思わぬ“引退勧告”に「まだ選手をやりたい」 抱えた葛藤…元ロッテ捕手が選んだ道

JFE東日本の宗接唯人アナライザーは2021年までロッテでプレー
ユニホームからスーツに変わっても、チームのためを思い動く姿は変わらない。元ロッテ捕手でJFE東日本の宗接唯人氏は、今季からアナライザーを務め、チームの第96回都市対抗野球大会8強を支えた。「まさかという感じだった」という現役引退だったが、プロ時代の経験も活かしながらデータ面などでアドバイスを送っている。
2年連続で東京ドームの舞台に立った。昨年とは違う役割に「選手が頑張ってくれたので。僕は別に特に何かをやったということはないんです」。そう言って謙遜する宗接アナライザーだが、試合中もベンチ入りして積極的に助言。試合のないときも、とにかく映像とにらめっこしながら「これまでにないくらい見ています」とデータ分析に励む。
思いもよらない“転機”だった。2021年限りでロッテを戦力外となったあと、JFE東日本でプレーしていた。昨シーズン終了後、落合成紀監督から声を掛けられた。「『来年からアナライザーをやってほしい。その中でいろいろアドバイスをしてくれたらチームもレベルアップできると思うから頼む』と言われ、まだ選手をやりたかったので『少し考えさせてください』と言いました」。
プロ野球の世界でいう「戦力外通告」のように、社会人でも毎年新しい選手が入ってくる一方で、ユニホームを脱ぐ選手は出てくる。当然わかっていることだが、31歳の宗接氏は「正直、昨年の段階ではまだ思っていなかったので…」と驚きを隠せなかった。それでも熟考の結果、「また違う立場で野球に携われる、少しでも選手の力になれたらと思って『やらせてもらいます』と答えました」と引き受けることを決めた。
プロ5年間で出場わずか4試合「もっとガツガツ前に行くのも大事だった」
2016年ドラフト7位で亜大から進んだプロの世界では、5年間で1軍出場計4試合、2打数無安打に終わった。「技術はもちろん、1軍で活躍する考え方が足りなかった。もっと気持ちを全面に出すとか、ガツガツ前に行くのも大事だったのかなと思います」と悔しさも残るが、トップレベルの選手らと汗を流した時間は貴重な財産だ。「いろいろな考え方を教えていただいたので、そういうのを次は僕が若い選手に伝える、そうやって経験が活きていると思います」とうなずいた。
2018年6月15日の巨人戦、プロ初出場となったZOZOマリンで浴びたファンの声援は今も、耳に残っている。「今まで感じたことがなかったし、たぶんこれから先も聞くことはないくらいの歓声をいただいた。あれは忘れられないですね」と懐かしそうに目を細めた。
「選手が結果を出してくれたときや、勝ったときはうれしいです。選手時代とはまた違ったうれしさがありますよ」。新たなやりがいを見つけた宗接氏は、「まずはアナライザーとして、また違った目線で野球を見て知識も少しは増えると思う。その先は指導者もやりたいと思っています」と今後の夢を描いた。
(町田利衣 / Rie Machida)