大谷翔平、逆転HR王のカギ 最下位球団にも露呈した課題…専門家が見た昨季との“違い”

ロッキーズ戦に出場したドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】
ロッキーズ戦に出場したドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】

ロッキーズ先発のメジャー1年目ドーランダーには2打席2三振

【MLB】ドジャース 3ー1 ロッキーズ(日本時間9日・ロサンゼルス)

 ドジャースの大谷翔平投手は8日(日本時間9日)、本拠地で行われたロッキーズ戦に「1番・指名打者」で出場し3打数1安打1四球。1-1の同点で迎えた7回に右線二塁打を放ってムーキー・ベッツ内野手の決勝2点適時打につなげた。菅野智之投手から2本塁打した前日7日(同8日)のオリオールズ戦に続き、チームの連勝の原動力となった。

 この日の相手は、今季早くも両リーグを通じてワーストの104敗目(40勝=成績は8日現在、以下同)を喫し、ナ・リーグ西地区で最下位のロッキーズ。同地区優勝をパドレスと激しく争っている最中のドジャースにとっては“取りこぼせない”試合と言えるが、実はそれほど簡単ではない。

「下位を低迷しているチームにも球の速い、将来性豊かな若手投手がいて、リズムがハマれば素晴らしい投球をすることがあります。経験の浅い若い打者も、簡単に打ち取られるケースが多い一方で、思わぬカウントで打ってきたり、思わぬ働きをすることがある。とっくに優勝の可能性がなくなり、ノープレッシャーで向かってくる若手の相手をするのは、意外に難しいものです」。こう指摘するのは、現役時代にNPB通算2038安打をマークし、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏だ。

 実際、ドジャースはナ・リーグ中地区最下位のパイレーツとの3連戦(今月2~4日)にまさかの全敗を喫し、ア・リーグ東地区のオリオールズにも1勝2敗で負け越した(5~7日)ばかりだ。

 この日のロッキーズの先発、チェイス・ドーランダー投手もしかり。今季メジャーデビューしたばかりの23歳右腕で、成績は21試合2勝12敗、防御率6.52とパッとしないが、ドジャース打線は最速161キロを計測したストレートに苦しめられ、結局辛くも3-1で競り勝った。

 大谷も初回の第1打席では、カウント1-2と追い込まれた上、内角低めのボールゾーンからストライクゾーンへ入ってくるチェンジアップを見送り三振。3回1死一、三塁の絶好機だった第2打席も、外角低めのカーブを振らされ三振に倒れた。

ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】
ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】

4球連続で投じられたチェンジアップを右線二塁打し、決勝打につなげた

「今季の大谷は力みが入るのか、150キロ後半以上の速い球への対応がいまひとつ。それが昨季に比べて打率(昨季.310→今季.279)、打点(昨季130→今季90)が伸びない一因かなと思います。第1打席と第2打席の三振も、160キロ前後の速球を見せられ、意識させられたからこその結果でした」と新井氏は課題を挙げる。

 大谷を完璧に封じたドーランダーは、5回まで1安打無失点の快投。6回の先頭打者に四球を与えたところで、左足を気にするような動作を見せて緊急降板し、リリーフしたファン・メヒア投手が同点二塁打を浴びたため、ドーランダーにも1失点が記録されたが、5回までの調子で続投していたら、試合はどうなっていたかわからない。

 それでも1-1の同点で迎えた7回、大谷は2死一塁でロッキーズ3番手の右腕アンヘル・チビリ投手が4球連続で投じた145キロのチェンジアップをとらえ、右線二塁打。続くベッツの決勝中前2点打につなげたのだった。「この打席のバッティングは素晴らしかった」と新井氏も称賛する。

 ナ・リーグ本塁打王争いは、49発でトップを走るフィリーズのカイル・シュワバー外野手にわずか1本差で、今季残り18試合。新井氏は前述の通り「大谷としては速い球への対応が鍵。150キロ後半のスピードボールや、スピードガン表示自体はそれほどでなくても速く見せる技術を持った投手にどう対応するかでしょう」と見ている。チームの地区優勝争いとともに、目が離せない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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