大谷翔平に感じた「チーム優先の考え」 本塁打出ずも…専門家が評価した場面「価値あった」

ロッキーズ戦で盗塁を決めたドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】
ロッキーズ戦で盗塁を決めたドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】

ロッキーズ戦で3打数1安打1打点1四球、ベッツの2ラン呼んだ

【MLB】ドジャース 7ー2 ロッキーズ(日本時間10日・ロサンゼルス)

 ドジャースの大谷翔平投手は9日(日本時間10日)、本拠地でのロッキーズ戦に「1番・指名打者」で出場し、3打数1安打1打点1四球。3回には四球で出塁後、26試合ぶりに今季18個目の盗塁を成功させた。チームは7-2で勝利を収め、単独首位に立っているナ・リーグ西地区で2位のパドレスがレッズに敗れたため、ゲーム差を「2」に広げた。一進一退を繰り返す地区優勝争い、その先のポストシーズンでは、大谷の“脚”が改めて相手チームにとって脅威となりそうだ。

 1-0とリードして迎えた3回、2死走者なしで打席に入った大谷は四球で出塁。続くベッツの2球目にスタートを切り、見事に二塁へ到達した。直後の3球目、ベッツは真ん中に来た151キロのシンカーをとらえ、左中間席へ17号2ランを放り込んで試合の流れをがっちりつかんだのだった。

 大谷の盗塁企図は、失敗した8月15日(同16日)のパドレス戦以来22試合ぶり、盗塁成功は同10日(同11日)のブルージェイズ戦以来26試合ぶりだった。野手に専念した昨季は59盗塁(失敗4)と量産し、驚異的な成功率93.7%を誇った。ちなみに、67盗塁(失敗16)でナ・リーグ盗塁王に輝いたレッズのエリー・デラクルーズ内野手も、成功率は80.7%だった。しかし、6月16日から投打二刀流を復活させた今季の大谷は18盗塁(失敗6)、成功率も75.0%にとどまっている(今季成績は9日現在、以下同)。

「盗塁はハムストリングスなどに怪我を負ったり、野手と交錯したりするリスクが高いですから、投手としての役割も当てにされている今季はだいぶ自重していると思います」。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも精通している野球評論家・新井宏昌氏はこう分析する。

 ただし「今月に入ってからドジャース打線全体の得点力が落ちていただけに、大谷があの場面で二盗を成功させて得点圏に進んだ意図はよくわかりますし、結果的にベッツの2ランが出たとはいえ、相手に重圧をかける意味で価値があったと思います」と評した。

3回2死走者なしでの四球に「チーム優先の考え方が表れていた」

 地区優勝争いが予断を許さないレギュラーシーズンの残り17試合や、その先のポストシーズンでは「大谷が盗塁を求められたり、自身でチームのために必要と判断して走るケースは増えるかもしれません」と新井氏。実際、自重気味の今季でさえ、大谷の18盗塁はドジャースでは群を抜いている(チーム2位はキム・ヘソン内野手とアンディ・パヘス外野手の13盗塁)。

 一方、ナ・リーグ本塁打王争いはこの日、フィリーズのカイル・シュワーバー外野手がメッツ戦で50号3ランを放ち、ノーアーチに終わり48本で足踏みした大谷に2本差をつけた。それでも新井氏は「打撃の状態はいいと思います。体調不良で登板を回避した頃に比べると表情も明るいですし、まだまだ望みは大いにあります」と見る。

 初回の第1打席では、外角の149キロのシンカーを打つも中飛。新井氏は「外へ逃げていく球だった分、バットの先に当たり、フェンスを越えるような打球にはなりませんでしたが、外角の球を引っ掛けることなく、センターや左中間方向に打ってやろうという意識が見えたのは良かったと思います」とうなずく。

 3回2死走者なしでの四球も、「カウント3-0から真ん中低めに来たストレート(152キロ)は、長打を狙って強振してもいい場面だったと思いますが、慎重に見送り最終的に四球で出塁したところに、チーム優先の考え方が表れていたと思います」。

 チームの2年連続ワールドシリーズ制覇のため、あくまでフォア・ザ・チームの姿勢を貫く。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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