“未完の大砲”が10→1の急失速 悩める23歳が胸中激白「仕留めきれない」

ロッテ5年目・山本大斗、前半戦10本塁打も後半戦1本塁打
23歳の大砲候補が悩める胸中を吐露した。昨季まで通算9試合出場だったロッテ・山本大斗外野手は、5年目の今季はここまで93試合出場と大きく飛躍。前半戦は10本塁打を放って球宴にも初出場するなど大ブレークを果たした。しかし後半戦は相手の研究が進んで急失速。7月中旬以降は1本塁打しか打てていない。「8番・右翼」で先発出場した11日のソフトバンク戦(ZOZOマリンスタジアム)はあと数センチでフェンスオーバーとなる右翼フェンス直撃の適時二塁打を含む3安打を放ったが、結果的に28試合連続ノーアーチとなった。
「(右翼フェンス直撃二塁打は)ホームランかと思ったんですけど……。入ってなかったですか? まあ、いいんですけど。今は状態は良くないですね。データがいろいろ出そろってきて配球も変わってきていますし、自分が思うように立てない打席がちょっと増えてきたかなという感じです。対策はずっと立ててやっているんですけど、なかなかうまくいかないことの方が多いです」
今季3度目の猛打賞でも心からは納得できない。本当に欲しいのは一発だ。2020年育成ドラフト3位で入団し、2年目の2022年シーズン中に支配下契約。同年にプロ初出場を果たすと昨季はイースタン・リーグで本塁打と打点の2冠を獲得するなど着実に成長してきた。開幕2軍スタートだった今季は2軍で16試合に出場して打率.365、5本塁打、21打点と結果を残して4月12日に1軍昇格。同16日の日本ハム戦(同)で6回にプロ1号となる決勝3ランを放って勢いに乗った。
5月は2本塁打を放つなど月間打率.267。6月はさらに加速した。交流戦初戦となった4日の巨人戦(同)では初めて4番に座り決勝の4号ソロ。月間5本塁打をマークした。7月5日のオリックス戦(ほっと神戸)では2打席連続本塁打をマークして10号に到達。その活躍はファンの心をつかみ「プラスワン投票」で球宴初出場を果たした。
球宴第2戦(横浜スタジアム)では全パの「4番・指名打者」を務めて初回に決勝の2点二塁打。「オールスターはファンの皆さんのおかげで、自分の中でも本当にいい経験をさせてもらった」と振り返るが、後半戦の本塁打は8月6日のソフトバンク戦(ZOZOマリンスタジアム)での1本のみ。打率も2割前後を行ったり来たりと低空飛行が続いて打順も下がっている。
「なかなか思うような打撃をさせてもらえない」
「前半戦は打率は低かったですけど、ホームランのペース的には自分が思い描いていた感じでは打てていたので良かったんですけど……。交流戦の終わりぐらいからオールスター明けにかけて、なかなか思うような打撃をさせてもらえないようになってきました」
得意のコースや苦手の球種などを研究されて不振に陥ると、焦りも生じてしまう。「なかなかもう甘い球は来ない感じです。好きなコースに投げてこないのは当然なんですけど、甘く入ってきた失投を仕留めきれていない。それは僕も悪い。配球も変わってきているし、難しいところです」。完全にスランプの悪循環にはまった。
2軍監督時代から指導してきたサブローヘッドコーチは「1軍は実質1年目みたいなもんやし、こんなもんでしょう」と一緒に我慢しながら練習に付き添い、助言を続ける。「元々、スランプが長いタイプなので『いかにスランプを短くするかを考えなあかんな』と言ってます。どうやったらヒットが出たとかホームラン出たとか、分かってきたら少しずつスランプが短くなっていく」と期待を寄せる。
もちろん、山本も首脳陣の気持ちは分かっている。「こんなに調子悪い中でも、ずっと使ってもらっているので、その意味を自分でしっかり理解して、残りの試合はとにかく状態に関係なく自分のベストを出せるように、1打席1打席集中してやりたいと思っています」。近い将来の目標は「ホームラン王」と言い切る長距離砲は「理想は長打もあって率も残せる打者」と前を向く。
今はとにかく集中して自分のスイングをするしかない。試行錯誤が続く苦しみは、必ずこの先の成長につながると信じて――。
(尾辻剛 / Go Otsuji)