TOEIC905点、軟式出身の“個性派”右腕 監督も認める才能「手塩にかけてきた」

法大・助川太志【写真:古川剛伊】
法大・助川太志【写真:古川剛伊】

茨城・茗渓学園高出身の助川太志投手2回無失点

 東京六大学野球秋季リーグは14日、法大が慶大2回戦に延長11回の末8-7で競り勝ち、1勝1分とした。高校軟式野球部出身の変わり種、助川太志投手が3年生にして神宮デビューを果たし、2イニングを無安打無失点(3四死球)に抑えた。

 リーグ戦初登板は、過酷とも言える場面で巡ってきた。7-7の同点で迎えた8回の頭から登場。助川は「すごく緊張しましたが、キャッチャーの土肥(憲将捕手=3年)くんとは3年間一緒にやってきたので、ミットとサインを信じて投げ込むだけでした」と顔を紅潮させる。相手の8、9番打者を打ち取った後、1番の今津慶介内野手(3年)に死球をぶつけたが、直後の二盗を刺し無失点で切り抜けた。

 投げっぷりがいい。テークバックでピンと伸ばした右腕を思い切り振り、ストレートは140キロ前後の球速表示を上回るスピードを感じさせる。続く9回も続投し、1死から四球、二盗、申告敬遠で一、二塁とされ、1打サヨナラ負けの窮地に立つも、代打の小山春内野手(4年)を右飛。続く林純司内野手(2年)をスライダーで見送り三振に仕留め、抑え切った。

 助川は茨城・茗渓学園高の軟式野球部出身。一般入試で法大入学を志す選手向けのセレクションに参加し、合格を勝ち取った。当初は「変化球の曲がり方が違う」と硬球への対応に苦しみ、「最初の1年間は投手としての力量が足りず、チームに迷惑をかけるばかりでした」と振り返る。

 しかし昨年2月、現役時代に近鉄などで活躍しNPB通算83勝の実績を誇る高村祐氏が母校・法大の助監督に就任し、助川の潜在能力を見出した。大島公一監督は「2年生の頃から高村くんがずっと評価していて、手塩にかけてきた。今年の夏のオープン戦から実績を積むようになり、十分使えると思っていました」と説明する。

専門科目の講義が全て英語で行われるグローバル教養学部に在籍

 実は助川のユニークなところは、“軟式出身”だけではない。法大野球部の選手では唯一人、グローバル教養学部(GIS)に在籍(他にアナリスト1人も在籍)。専門科目の講義は全て英語で行われ、帰国子女も多い学部だ。大島監督が「(助川は)英語がペラペラですよ」と証言する通り、TOEIC905点のスコアを誇る。TOEIC900点以上と言えば、受験者の上位数%に入り、「英語を使った仕事で国際的に活躍できる」レベルとされる。助川自身「僕は帰国子女とかではないですが、将来は英語を生かした仕事をしたいと思っています」とうなずく。

 野球では「目標はエースの野崎(慎裕投手=4年)さん。あのように18番を背負って堂々したピッチングをするには、経験と技術が必要だと思います」とボルテージを上げる助川。そんな後輩を、野崎は「普段はふわふわしているけれど、野球になると真面目。そういうところが結果につながったのだと思います」と評した。

 異色の右腕は国際社会に出て活躍する前に、憧れてきた神宮のマウンドでまだまだやれることがありそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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