「若い子優先は仕方がない」続く2軍暮らしに胸中 30歳が理解する“自らの立場”

西武・松原聖弥【写真:小林靖】
西武・松原聖弥【写真:小林靖】

観客沸かせたスライディングキャッチも「愛也なら簡単に捕っていますよ」

 減る出場機会に、危機感を滲ませる。昨季途中に巨人からトレードで西武に加入した松原聖弥外野手は、5月7日以降2軍暮らしが続いている。

 西武の2軍は17日、1軍本拠地のベルーナドームでイースタン・リーグ巨人戦に臨んだ。「ファームサンクスデーinベルーナドーム」と銘打ち、ファンには試合後サイン会、写真撮影会、キャッチボールなど、選手と触れ合える企画が用意されていたとあって、2軍戦では異例の4697人の観客が来場。特にグラウンドに張り出した一、三塁側のフィールドビューシートは、ぎっしり埋まっていた。そんなスタンドが歓声で沸き上がった瞬間があった。

 5回、先頭の巨人・湯浅大内野手が放った飛球が左中間後方を襲う。センターを守っていた松原は、右中間寄りのやや前方にポジショニングしていたが、猛然と背走。後ろ向きのまま逆シングルで捕球し、最後はフェンス際で足からスライディングする形になった。

 1軍戦でもなかなかお目にかかれないスーパーキャッチだ。ただ、本人は笑顔を浮かべながらも「いやいやいや、(同僚の西川)愛也(外野手)だったら、もっと簡単に捕っていますよ」と謙遜した。

 松原は仙台育英高3年の夏にベンチ入りを逃し、チームは甲子園大会に出場したものの、アルプススタンドで太鼓を叩いて応援していたという。卒業後は首都大学リーグ2部の明星大でプレー。2016年育成ドラフト5位で巨人入りした。

 2年目の7月に支配下登録を勝ち取り、5年目の2021年には1軍のレギュラーの座を奪取。巨人の育成出身選手で初めて規定打席をクリアし、打率.274、12本塁打37打点15盗塁の好成績をマークした。だが、翌年以降は外国人選手の加入などで出場機会が減り、昨年6月に若林楽人外野手とのトレードで西武に移籍していた。

今季1軍出場8試合で5月7日以降2軍暮らし「アピール心掛けています」

 昨季、西武移籍後の松原は1軍で24試合出場、打率.123(65打数8安打)、5打点1盗塁。今季は4月15日に1軍昇格するも、わずか8試合出場、打率.273(22打数6安打)で、5月7日に2軍落ちした。

 その間、西武の1軍の外野陣は今季、西川が打率.275、10本塁打35打点23盗塁、守備でも好守を連発する活躍で、ついにセンターのレギュラーに定着。ドラフト2位ルーキーの渡部聖弥外野手、23歳の長谷川信哉外野手の進境も著しく、さらに内・外野を守れる外崎修汰内野手、平沼翔太外野手もいて、競争が激しい。

「ライオンズの外野手はみんな、めっちゃ上手いです。それは去年来た時から感じていました。練習方法にいろいろな引き出しがありますし、熊代(聖人1軍外野守備走塁コーチ)さんも、赤田(将吾2軍野手コーチ)さんも素晴らしいコーチです。他球団に比べて、西武の外野手はちょっと違うな、と思います」と述懐する。

 2軍も育成選手を含め外野手は数多い。30歳となった松原は出場機会に恵まれている立場ではない。スーパーキャッチを演じた17日も、6回の守備から蛭間拓哉外野手と交代し、ベンチに退いた。「若い子たちが優先されるのは、僕も若い時に出させてもらっていたので、仕方がないです。少ないチャンスでしっかりアピールできるように、常にに心掛けています」と潔く言い切る。

 一方で、「首も寒くなってきますが、焦らないように。焦れば結果が良くなるというわけではないので、あまり考えないようにしています」と胸の内を明かした。今季イースタン・リーグでは71試合出場、打率.265、1本塁打16打点5盗塁の数字を残している。

 松原は「もちろん、レギュラーとして試合に出ることが一番いいのですが、チームが困った時にポンと、どこでも任せられるような選手になりたいという気持ちは、ずっと変わっていません」とキッパリ。フォア・ザ・チームを貫く好漢が、自らの出番を着々と待っている。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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