大谷翔平らも「リスペクト」 専門家が解説…カーショーの「ボロボロ」にならぬ美学

新井宏昌氏が本拠地公式戦最終登板を解説「ベテランらしい」
レジェンドの姿に専門家も大きな感銘を受けた。今季限りで現役引退するドジャースのクレイトン・カーショー投手は19日(日本時間20日)、本拠地で行われたジャイアンツ戦で5回途中2失点と好投。本拠地公式戦最終登板で、チームの13年連続ポストシーズン進出に貢献した。怪我から復活し、2桁勝利を挙げたシーズンでの引退を前日に発表。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏は「潔い決断」と評価した。
大歓声を受けてマウンドに立ったカーショーは制球に苦しみながらも4回1/3を2失点と粘投。「ピンチを作っても、何とか粘ってベテランらしい投球術を披露していました。高めから落ちるカーブをうまく使って惑わせていたし、ボール球を振らせたり、やはり経験値が違いました」。試合を作ってマウンドを降りると、スタンディングオベーションでしばらく拍手が鳴りやまなかった。
ドジャース一筋18年。2008年にメジャーデビューし、2011、2013、2014年とサイ・ヤング賞を3度も受賞した。2014年はリーグMVP。近年は怪我に苦しんできたが、通算222勝、3045奪三振を誇るレジェンド投手である。
今季は21試合に登板して10勝2敗、防御率3.55。2023年オフの左肩手術、昨年オフの左足手術を乗り越えて復活した姿を見せていた。この試合の降板後は大谷翔平投手ら同僚と次々にハグ。「チームメートも、よりリスペクトした1日になったと思います。誰もが『まだやれる』と思っている中で、ここが潮時と考えたカーショーの気持ちをくんだ雰囲気が出ていました。公式戦は本拠地最後の登板。さすがカーショーというところを見せてくれました」。

「だましだまし抑えても納得できないのでしょう」
野球選手の引退は、2パターンに分かれるという。1つは「ボロボロになるまでやり続けて、やめる選手」。もう1つが「自分本来のパフォーマンスが出せないことが多くなったと感じて、やめる選手」。カーショーは後者で「真っすぐは全盛期に比べると明らかに落ちている。ローテーションを守って投げていますけど、カーショーも今の自分の力量を分かっている。力勝負では抑えきれない。だから引退を決めたんでしょう」。
一流を極めたからこそ、感じることができる境地である。新井氏は通算2000安打を達成した1992年に現役を引退している。前年には打率.309をマークして球宴にも出場。1992年も106試合に出場していた。プロ入り時の恩人であるヤクルト・野村克也監督に引退の挨拶に出向くと、ヤクルトでの現役続行を打診されたという。「迷いかけましたけど、獲ってもらっても自分が思うようなプレーはできないので潔く断りました」。当時をそう振り返った。
余力を示しての引退は共感できる部分がある。「現状を分かった上での潔い決断で、私は大好きです。サイ・ヤング賞を3度獲得して、背負っているものが違う。だましだまし抑えても納得できないのでしょう。ボロボロにならないうちにやめる。素晴らしい決断だと感じます」。まだやれる、もっと見たい――そう思われる中での重い決断。37歳左腕の去り際の美学をリスペクトしたい。
(尾辻剛 / Go Otsuji)