幻の白星から暗転、20歳剛腕の苦悩「簡単にはじき返される」…消えた勢い“プロの壁”

ロッテ2年目・木村、最近2試合11回で13失点と失速気味
期待の20歳右腕が悩める日々を送っている。ロッテ・木村優人投手はリリーフで1軍デビューした2年目の今季、初登板初勝利を挙げるなど順調に成長曲線を描いてきたが、夏場を迎えて失速気味。16日のオリックス戦(京セラドーム)では5回を投げて自己ワースト7失点で2敗目を喫した。6月の先発転向後は登板後に出場選手登録を抹消されて間隔を十分に空けながら調整。しかし最近2試合は計11回13失点と打ち込まれている。
「自分の実力不足の部分が大きいです。相手も研究してきて、自分の投球の癖をつかんできているのかと感じます。以前まで振ってくれていた変化球を振ってくれなくなったり、真っすぐも簡単にはじき返されたりする。それに関しては物足りなさを感じているので、もっともっと自分もやらなきゃいけないのかなと思います」
霞ケ浦高から2023年ドラフト3位で入団。昨年は1日5食の食事や筋力トレーニングなどで体作りに専念し、入団時の体重78キロから92キロへと14キロのボリュームアップに成功した。開幕1軍で迎えた今季は3月30日のソフトバンク戦(みずほPayPayドーム)で同点の7回にプロ初登板。1回を3者凡退に抑えると直後に味方が勝ち越し、プロ初勝利をマークした。
「自分の投球で勝ちをつかみ取ったというよりは、運みたいなところもある」と謙遜気味に振り返るが、そこから救援で10回連続無安打無失点。デビューから“ノーヒットノーラン”を超える離れ業を演じて大ブレークを果たした。当時は「ストライク先行もできていましたし、ある程度思い描いた通りに投げられていたので、そこは良かった。あんまり責任を感じすぎずに投げられたのかなと思います」という。
150キロを超える直球にカーブ、フォークなど多彩な変化球を操り、5月15日の楽天戦(東京ドーム)ではプロ初セーブも記録。救援では14試合に投げて1勝0敗1セーブ5ホールド、防御率2.75を記録した。
3勝目消滅から暗転…「研究が追いついていない」
6月17日の阪神戦(甲子園)でプロ初先発。7月2日の楽天戦(楽天モバイルパーク)では6回3失点にまとめて先発転向後初勝利となる2勝目を挙げた。同17日のソフトバンク戦(北九州)は5回2失点と好投。ただチームが4点を勝ち越した6回途中に雨が強まって6回の攻撃が成立しないまま、試合は5回コールドとなって3勝目が幻となったところから歯車が狂い始めた。
その後に先発した4試合は白星をつかめないどころか、プロ初黒星を喫した今月4日の日本ハム戦(ZOZOマリンスタジアム)から2連敗中。連敗中の防御率は9.00で、通算でも3.81まで悪化した。ここまで先発と救援を合わせて21試合に登板して2勝2敗となっている。開幕直後は無双状態でゼロを並べ続けた右腕が直面する“プロの壁”。「シーズンの疲れはありますけど、登板間隔を空けて投げてますし、疲れというよりも自分の研究が追いついていないところだと感じます」と自己分析する。
猛暑の影響もあって夏場は若干体重も減って現在は90キロだという。「ベスト体重なのかは分からないですけど、今投げている感じは悪くはないので、今の状態が一番いいかなと思います。後はフォームもそうですし、中身の部分をしっかり管理して、投球につなげたい」。
中継ぎも抑えも先発も経験した濃厚な1年。「先発とリリーフは全然違います。先発は長い回を投げないといけない責任がある。マウンドに上がるからには絶対に抑えたいと思ってやっています。相手の研究を上回れるように、しっかり目標を設定してやっていきたい。1つ1つ勉強ですし、もっともっとやれるんじゃないかと思います」。まだ高卒2年目の20歳。これからローテーションの軸へと成長するために、一歩ずつ壁を乗り越えていくしかない。
(尾辻剛 / Go Otsuji)