33歳で衰え痛感「野球が嫌いになるんじゃ…」 NPB復帰ならず、元タイトル右腕の“新たな挑戦”

元広島の薮田がオイシックス退団「11年間やった中で一番いろいろ考えた」
広島時代の2017年に最高勝率(.833)のタイトルを獲得した薮田和樹投手は、今季限りでオイシックス新潟アルビレックスBCを退団する。2023年限りで広島を戦力外となってから新潟で2年間を過ごしたが、今季は苦悩の1年だった。もがき続けた胸中や、今後のプランを明かした。
ポツリとつぶやいた言葉には、重みがあった。「11年間やった中で、一番いろいろ考えたというか、本当に野球を嫌いになるんじゃないかというくらいの1年でした」。今季はローテーションを守り、22試合に登板(21先発)して2勝8敗、防御率4.58。投げれば投げるほど、“現実”を痛感していた。
「感覚自体はずっといい。でも力の衰えを感じていて、通用していないなと。若い子たちが多いチームなので、若い選手が取ってくれた点をすぐに返してしまったり、自分が先発をやらせてもらっている以上、ほかの投手のチャンスも自分が使ってしまっている。純粋にNPBに戻ることだけを考えてやる野球じゃなくなった、そういう面白さではなくなったという感じですね」
亜大から2014年ドラフト2位で入団した広島で、3年目に大ブレークを果たして優勝に貢献し、侍ジャパンにも選出された。しかし2023年にわずか3登板にとどまり戦力外に。2024年、NPB復帰を目指して同年からイースタン・リーグに参加したオイシックスに加入した。昨季は26試合で5勝10敗、防御率3.65。吉報は届かなかった。
11月から中東リーグ参戦「最後のチャレンジみたいな感じですね」
現在33歳。「自分より年上の投手って、各チームに数人ずつしかいない。ここから(NPBに)戻る可能性は昨年より低いと感じていて、でも実際は戻ってからが勝負なので。NPBに戻るのは家族を含めた夢ではあったんですけど、その狭き門にチャレンジするよりかは、現実的に収入面とかも考えた上で海外の選択肢も広げていこうかなとか。成績がついてこなかったのもありますけど、何としてもNPBに戻るというより、自分の技術を高めたり、そっちにフォーカスを当てていました」と偽らざる本音を明かした。
まずは11月中旬から約1か月、アブダビ・ファルコンズの一員として、中東と南アジアを拠点とするプロ野球リーグ「ベースボール・ユナイテッド」に参戦する。「もう純粋に、もう一回自分のことだけを考えてやってみようと。最後のチャレンジみたいな感じですね」。異国の地でアピールし、オファーを待つことになる。
「9年間、広島の野球しか知らなかったし、プロ野球でどう行きていくかしか考えていなかった。でも新潟に来て、独立リーグを含めていろいろなところから集まった選手がいて、いろいろな人生観が聞けました。野球だけじゃない、日本だけじゃない。外に目を向けるようになりました」と薮田。広い視野で、今後の人生について考えるようになって出した結論だった。
そしてもうひとつ、芽生えた感情がある。「オイシックスに入って若い選手を見ていく中で、自分が指導者なら……と考えるようになりました。野球という道で進んでいくなら、指導者というのも最終的なところにはありますよね」。まだまだ続く旅路。薮田はどんな道を歩んでいくのだろうか。
(町田利衣 / Rie Machida)