DH制は「使わなくてもいいもの」 NPB通算306本塁打…球界OBが語った導入のメリット

レジェンド始球式登板「手を伸ばしてよくノーバウンドで捕ってくれた」
明大OBでプロ野球のヤクルト、巨人、阪神でも活躍しNPB通算306本塁打を放った広澤克実氏が28日、東京六大学野球秋季リーグの「レジェンド始球式」に“登板”。終了後、来年から導入されるDH制や、昨年まで15年連続でドラフト指名選手を輩出している母校・明大について見解を述べた。
始球式で広澤氏の右腕から放たれたボールは、地面すれすれのところで明大の小島大河捕手(4年)がキャッチ。ノーバウンド投球を成功させたが、「実は3日前にぎっくり腰をやってしまいました。63歳でぎっくり腰でもワンバウンドにならず、小島が手を伸ばして、よく捕ってくれました」と苦笑した。
大学球界では、東京六大学野球連盟と関西学生野球連盟が来春からDH制を導入することを決定。これで全日本大学野球連盟に所属する全27連盟でDH制が採用されることになった。日本高校野球連盟も来春の選抜大会から、広澤氏がプレーしたプロ野球のセ・リーグも再来年の2027年シーズンから導入する。
広澤氏はポニーリーグの理事長を務め、全国大会として自らの名前を冠した「広澤克実杯全日本地域対抗選手権」が行われている。「私は中学野球に携わっていて、基本的には、今までDH制が無くて表に出られなかった人にもチャンスが訪れると考えています」と語る。
一方で「DH制というものは、使えるけれど、使わなくてもいいものと認識しています。中学野球にも4番・ピッチャーの凄い子がいて、高校もそういう子がいれば、DHを使わないと思います。チーム事情、投手の打力や走力に応じて各チームが判断すればいい」と強調した。DH制導入がドジャース・大谷翔平投手のような投打二刀流のスターの誕生を阻害することはないと見ている。
今年も強打の捕手、最速151キロ左腕がいて記録更新確実
さらに阪神時代の2003年、明大の先輩でもある星野仙一監督の下でリーグ優勝したシーズンを回顧。「当時(トレイ・)ムーアという先発投手がいて、すごく打撃が良かった。普通は代打を送ってから交代させるのですが、星野さんはムーアの場合には打たせてから交代していたほどです。今後もそういうことは起こるだろうと思います」と語った。
また、明大は2010年以降、15年連続でドラフト指名選手を輩出しており史上最長。今年も強打の捕手の小島、最速151キロ左腕の毛利海大投手(4年)らがいて、記録更新が濃厚な状況だ。
その秘訣について、大学時代に名将として誉れ高い元監督・島岡吉郎氏の指導を受けた広澤氏は「僕は御大(島岡氏)から『ここはプロ野球の養成所ではない。人材を育成して社会に供給する場だ』と言い聞かされました。近年の歴代監督も、その教えを忠実に守っている。それがいいのではないでしょうか。実際に明治では、上手い人も下手な人も公平に扱っています」と強調。技術だけでなく人間性、社会性を重視しているからこそ、各球団の信頼を得ていると見ている。
広澤氏は今も“明大魂”を胸に、野球評論家として球界の後輩たちに温かい視線を注いでいる。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)