大谷翔平、怒涛の2025年 日本凱旋、長女誕生、二刀流復活…記録と記憶を刻んだ1年

4月に長女が誕生…「心地のいい寝不足というか、幸せな寝不足」
ドジャースの大谷翔平投手は28日(日本時間29日)、レギュラーシーズン最終戦を終えた。打者としてリーグ2位の55本塁打、メジャートップの146得点。投手としても14先発で1勝1敗、防御率2.87、62奪三振を記録し、投打二刀流で圧倒的な存在感を示した。フィールド内外ともに慌ただしく、濃密な一年となった。
大谷は昨季ドジャースに加入1年目でワールドシリーズ制覇まで駆け抜けた。昨年末には自身のインスタグラムで真美子夫人の妊娠を発表。「リトルルーキー」の誕生を心待ちにしていた。昨年は韓国で開幕したが、今年は東京ドームに“凱旋”。第2戦で日本のファンの前で今季1号を放ち、スター性を見せつけた。
4月2日(同3日)のブレーブス戦では劇的な3号サヨナラ弾。ダイヤモンドを一周した後の右手を滑らせる仕草は「デコルテポーズ」として話題を呼び、チーム内にも浸透していった。18日(同19日)には第1子となる長女が誕生し、「父親リスト」で2試合を欠場。翌日には「健康で美しい娘を産んでくれた妻に感謝しています」とインスタグラムで喜びを報告した。復帰8試合目で“祝砲”を放つと、「寝不足気味でしたけど、心地のいい寝不足というか、幸せな寝不足だったので」と語り、父親としての新たな表情をのぞかせた。
例年6月に好調期を迎えることの多い大谷だが、今シーズンは「5月男」となった。月間15本塁打は2023年6月に並び自己最多タイ。打率.309、OPS1.180、27打点の好成績で通算6度目の月間MVPを受賞した。前半戦だけで32本塁打を放ち、リーグトップの長打率.605&OPS.987をマーク。オールスターには5年連続5度目、ナ・リーグ最多の396万7668票を集めて選出された。
一方で6月は大きな“変化”があった。二刀流の復帰だ。当初は5月頃を目安にしていたが、スケジュールは後ろ倒しになり、7月以降と見込まれていた。ところが、6月16日(同17日)からの本拠地・パドレス戦で登板が急きょ発表された。2023年8月23日以来、実に663日ぶりのマウンド。実戦での調整という異例の形で二刀流が復活。大谷だからこそ可能な“劇的リターン”だった。

2年連続50HRは史上6人目の偉業…“リーグ7冠”達成
後半戦は個人としてもチームとしても浮き沈みがあった。19日(同20日)のブルワーズ戦から球団タイ記録となる5試合連続本塁打を樹立したものの、月末から8月にかけては9試合連続ノーアーチと足踏みした。ドジャースも8月14日(同15日)には地区首位を明け渡した。
一進一退の攻防が続く中、8月以降は徐々に投手・大谷のエンジンがかかっていく。8月27日(同28日)のレッズ戦で今季11度目の先発登板。5回1失点9奪三振の好投で2023年8月6日のジャイアンツ戦以来、749日ぶりの勝利を手にした。もっとも、大谷自身は白星については「あんまり気にしても仕方ない部分もある」とし、術後初めて5イニングを投げられたことに手応えを得ていた。
地区優勝、ポストシーズンに向けて1戦1戦が大事になる9月。大谷は体調不良で先発をスキップしたこともあった。それでも、タイラー・グラスノー投手が背中の張りを訴えると前倒しして“緊急登板”。チームのために、自らを鼓舞した。二刀流が最大限に真価を発揮したのは、プレーオフ前哨戦と注目された16日(同17日)のフィリーズ戦だった。
本塁打王を争っていたカイル・シュワーバー外野手から三振を奪うなど、5回無安打無失点の快投を見せた。降板後にブルペンが炎上して勝利投手の権利は吹き飛んだものの、8回には今季50号を叩き込んだ。2年連続でのシーズン50本塁打は史上6人目の偉業。再び歴史に名前を刻んだ。
25日(同26日)には昨季に並ぶ54号を放ち、ドジャースは地区優勝を成し遂げた。さらにシーズン最終戦となった28日(同29日)の敵地マリナーズ戦、7回に自己、そして球団記録を更新する55号をマークした。シュワーバーに1本及ばず3年連続での本塁打王とはならなかったが、OPSや得点など“リーグ7冠”と今季も圧倒的だった。
3年連続、自身4度目のMVPはほぼ当確と言える状況。最終戦で55号を放つと、「最高だ。史上最高。MVP、またね」(ESPNのジェフ・パッサン記者)、「なんて最高の時代に生きているのだろう。我々はいま、なんという選手を目撃していることか」(FOXスポーツのベン・バーランダー氏)などと米メディアも感動と敬意を送った。大谷は“2年目”も、伝説を成し遂げた。
(新井裕貴 / Yuki Arai)