引退試合の打診も“固辞”…戦力外35歳が描く「現役続行」 後押しした子どもの反応

DeNA一筋13年の三嶋一輝「病気をしたからこそまだできそうだと」
プロ13年目。チーム一筋で歩んできたDeNAから戦力外通告を受けた。三嶋一輝投手は「取り乱すことはなかったです。『ああ、そっか』って。この2年間くらいなかなか1軍で成績を残せていなかったですし、年も35となると正直ビックリはしなかったです」と“その瞬間”の思いを明かす。球団からは功績に敬意を表して引退試合も打診されたが、「やり残したことがある」と迷いなく現役続行を決めた。
9月上旬、来季の構想から外れていることを告げられた。仮に現役引退を選んだ場合、引退試合とセレモニーを行う日も提示された。球団側からは「結論は急がなくていい」と言われたが、三嶋はその場で「現役続行します」と宣言した。
「病気(2022年に発症した黄色靭帯硬化症)をしたこともあって、手術をしてまた投げて難しいことがたくさんあったんです。波があった中で、少なからずダメなときばかりじゃなくて、こうすればいいというのもまだ掴めそうな気がして。35歳でもう無理だろうという見方もある中で、病気をしたからこそまだできそうだと思っている自分がいて、これは挑戦しないといけない。綺麗な終わり方もひとつかもしれないけど、まだこれからなんじゃないかなっていうのが本音でした」
炎は消えていない。家族に報告すると、背中を押してくれた。サッカーに夢中な愛息からは「じゃあパパ、サッカーいっぱい来られるね」という意外な反応が返ってきた。「子どもらしいですよね。『パパはもしかしたらほかのチームで野球をするかもしれないし、野球を引退になるかも知れないよ』と説明したら『それはそれでいいんじゃない』って。僕より嫁さんや子どもの方が前を見ているんだなって思いました」と穏やかに笑った。

話題のSNS開設には困惑中「何を呟いていいかわからないんです」
2012年ドラフト2位で入団。5月から先発を担い、2年目には開幕投手の大役を務めた。2018年からは救援に専念して同年60試合、2019年にはリーグ2位の71試合に登板。2020年途中からは守護神に君臨した。昨季はわずか7登板、今季は6登板で防御率10.80に終わったが、どんなときも、チームのためにマウンドに上がった13年間だった。
「17番といういい番号をもらって、全部のポジションを経験させてもらって、病気もして、もっと大事なときに球団に貢献したかったなっていう思いです。でもなかなかできないと思うんです。大きな失敗もしましたし、期待を裏切ったこともあったけど、本当にたくさんのことがあったなって。ドラフトでまず最初にベイスターズに入団できてよかったなって思います」
DeNAでの最後の登板となった9月24日のイースタン・リーグ、楽天戦(横須賀)では9回の1イニングを全球直球勝負で健在ぶりを示した。翌25日にはもうトレーニングを開始し、まだ続く野球人生に向けての準備を進めている。先日はX(旧ツイッター)とインスタグラムのアカウントを開設。ファンの間で瞬く間に話題となり、「絵文字、キラキラしか使わないから変ですかね? 何呟いていいかわからないんです。今まで周りに応援してもらった分、自分を知ってもらいたいというのもあるんです」と試行錯誤しながらも楽しんでいる。
今後はNPB球団を第1希望にオファーを待ち、幅広い可能性を模索していく。「野球に感謝して恩返ししたいですね。一番はベイスターズに、人としても野球でも成長した姿を見せたい。そういうスタートになるのかなと思います」。納得がいくまで右腕を振り続ける覚悟。“不屈の男”には、そんな姿が似合っていた。
(町田利衣 / Rie Machida)