7年目で初の規定到達も、元ドラ1の苦悩「打てる投手少ない」 打者を悩ませる“異常現象”

ロッテ・藤原恭太【写真:荒川祐史】
ロッテ・藤原恭太【写真:荒川祐史】

ロッテ藤原、初の規定打席到達で打率リーグ10位

 7年目の躍進が来季の巻き返しへの光となる。ロッテは5日、ZOZOマリンスタジアムで今季最終戦となるソフトバンク戦に2-5で敗戦。56勝84敗3分けの借金28に終わり、8年ぶりの最下位に沈んだ。そんな中で奮闘したのが藤原恭大外野手。自己最多107試合に出場してプロ入り7年目で初めて規定打席に到達し、打率.271はリーグ10位に入った。

「規定に届いたのは良かったし、来年につながります」。2018年ドラフトで、3球団1位競合の末にロッテ入団。1年目から1軍出場してきたものの相次ぐ故障などでレギュラーに定着できずにいた。これまで以上の結果を求めて今年は打撃を改造。2ストライク後はスタンスをやや広くし、ノーステップ打法にしたことで安定感が増したのである。

 さらにスイングの軌道も改善。「バットの軌道、アプローチを変えました。詰まってもヒットになるように軌道を意識しています。ポイントを無理やり体の近くにして引きつける感じです。ポイントが前にならないように、きれいに打ちすぎないように、押し込むイメージです」。今年は詰まることを恐れずに結果を積み重ね、リードオフマンに定着した。

 しかし右背部の痛みのため、9月3日に出場選手登録を抹消。すでにシーズンの規定打席に到達しており、チームのCS進出も消滅したことから首脳陣が無理をさせず、1軍復帰は同30日だった。抹消中は規定打席到達が迫っていたルーキーの西川史礁外野手が打席数を“稼ぐ”ため1番に。今月4日の日本ハム戦(ZOZOマリンスタジアム)で「2番・右翼」先発復帰した藤原は、決勝点を呼び込む二塁打を放った。

 結果的に一時戦列を離れたが、故障防止も強く意識している。「シーズンを戦っていくと痛くなったことがないところが痛くなる。体の状態を維持するのも技術の1つかなと思ってやっています」。疲れが残る中でも「体を動かせるトレーニングをしている。走る量を増やして、無理やり体を起こしています」と話す。

 さらに水風呂も利用しながら全身をケア。夏場は汗をかいて体重が落ちやすい中「おいしいものをしっかり食べて、体重を落とさないようにしている」と81キロ前後をキープしてきた。

続々と出てくる剛腕投手「年々レベルが上がっている」

 今季のパ・リーグはソフトバンクのリバン・モイネロ投手を筆頭に防御率1点台の投手が4人。異常とも言える投高打低で一時は3割打者不在の危機もあった。打率.304で首位打者を獲得したソフトバンクの牧原大成内野手だけが3割を死守。「規定打席に届いても.270打たないと意味がない」と話していた藤原は.271と目標をクリアしてベスト10に名を連ねた。

 科学的トレーニングの向上もあり、近年は球速150キロ以上の直球を投げる投手が増えてきている。フォークやチェンジアップなど変化球を交えられると、捉えるのは容易ではない。近年のパ・リーグは毎年のように剛腕タイプの若手が頭角を現しており、藤原は「『誰や、こいつ』っていうピッチャーが出てきたり、年々レベルが上がっていると感じます。打てると思えるピッチャーが少なくなっている」と打者には厳しい状況だと訴える。

 打席数が少ない開幕直後は3割を大きく超える選手も、夏場にかけて数字が落ちてくる。特に今年はその傾向が顕著で「数字が近い人の打率を見ると、後半戦に入ると落ちてきている。みんな頑張ってるなと思いながら、気持ちが楽になる部分もありますね」と話したこともあった。苦しんでいるのは自分だけじゃない。そう考えて気持ちを奮い立たせた。

 最下位に終わったチームの中で西川、寺地隆成捕手とともに規定打席に達した藤原には、来季の逆襲の軸となる期待がかかる。「もっと自分の引き出しを増やしていきたい」。もう新たな戦いは始まっている。大きな飛躍を遂げた25歳は、さらなる高みを見据えて2026年に向かう。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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