大量の不在着信に「何事かと」 現役ドラフトの“リアル”…1年で戦力外、見つけた異国の地

楽天時代の櫻井周斗【写真:小池義弘】
楽天時代の櫻井周斗【写真:小池義弘】

昨オフに楽天から戦力外通告を受けた櫻井周斗

 プロ野球の第1次戦力外通告の期間が10日に終了した。1年前の2024年オフ、楽天を戦力外になった櫻井周斗投手は、2023年の現役ドラフトでDeNAから楽天に移籍したが、わずか1年で通告を受けた。移籍1年目から結果を出さなければいけないと考えていた。「受け入れられる部分はあった」と、当時の複雑な心境を振り返った。

 2017年に東京・日大三高からドラフト5位でDeNAに入団。5年目の2022年に左肘の手術を受け、オフに育成契約となった。翌2023年は支配下に復帰したものの、2年連続で1軍での登板はなかった。現役ドラフト当日、球団スタッフから連絡があったときは、練習中で電話に出ることができず、スマートフォンに大量の不在着信が残されていた。

「最初は何事かと思いました。驚きはありましたけど、僕の立場的にも怪我で育成契約になって、怪我から復帰した年だったので、どちらにしてもその次の年が本当にラストチャンスかなっていうイメージはありました。『来年結果を出さなければ』っていう気持ちでしたね。現役ドラフトは自分が決められることではないですから、どうモチベーションを保つかだと思います。僕の時は2回目の現役ドラフトで、1回目の時に移籍して活躍している選手もいたので、むしろチャンスと捉えました」

 結果を出さなければと強い気持ちで挑んだ移籍1年目だったが、わずか8試合の登板に終わり、オフに戦力外通告を受けた。新天地となった楽天での1年間を振り返り「1軍で投げることはできたんですけど、しっかり結果を残すっていう意味では全くできなかった」と後悔を滲ませた。「この1年が勝負」だと考えていたため、戦力外通告もなんとなく予想していた。だが、心のどこかでは、そうならないことを祈っていた。

 予期していたとはいえ、現実を受け入れるのには時間がかかった。ありがたいことに、球団からはセカンドキャリアの話もあり、一度は引退も考えた。だが、野球を続けることを決断した。「野球を辞めた後に『もう1回やります』っていうのは難しいと思いましたし、当時まだ25歳で体も元気なので、野球でお金を稼ぎたいという気持ちもありました」。野球選手としてのキャリア積んでいきたかった。

元DeNA監督からの誘い…明確になった自らの強み

 2025年1月に、元DeNA監督のアレックス・ラミレス氏からの誘いを受け、カリブ海沿岸諸国のウィンターリーグ王者が集うカリビアンシリーズに出場。ここでの経験が、自身の強みを明確にさせた。

「戦力外の雰囲気を感じ取る頃には、若手が優先され出場機会も減ってきます。自分の中で不完全燃焼でした。カリビアンシリーズでレベルの高い選手と対戦して、自分の実力がしっかり発揮できたら打者を抑えられることがわかりました。自分は球種が多い。『自分の武器を生かせる場所はどこだろう』と考えると、先発が向いていると思いました」

 カリビアンシリーズ終了後、台湾プロ野球(CPBL)の台鋼ホークスの入団テストを受け入団。球団からは「先発をやってもらいたい」という話もあり、今シーズンは先発で投げてきた。8月17日に初登板、初勝利をマーク。これまでは中継ぎで登板していたため、キャリアを通じても初勝利となり「自分は先発で結果を残せるタイプなんだと思います」。と手ごたえを掴んでいる。

 25歳で受けた厳しい通告。だが、そこで野球人生が終わったわけではない。自分の武器を発揮できる場所を見つけた左腕は、野球選手としてのキャリアをさらに築いていく。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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