スカウトが口を揃えた「不作」 “入団拒否”のリスクも…佐々木麟太郎、2球団1位指名の背景

スタンフォード大・佐々木麟太郎(投稿をスクリーンショット)【提供:ジョン・ロザーノ/ISI Photos】
スタンフォード大・佐々木麟太郎(投稿をスクリーンショット)【提供:ジョン・ロザーノ/ISI Photos】

下位指名予想がふたを開けてみれば…「大谷翔平以来」の衝撃

「プロ野球 ドラフト会議 supported by リポビタンD」が23日に行われ、岩手・花巻東高時代に歴代最多の高校通算140本塁打を記録した米スタンフォード大・佐々木麟太郎内野手に、ソフトバンクとDeNAの1位指名が重複。抽選の結果、ソフトバンクが交渉権を獲得した。現役時代に中日、巨人、西武で強打の捕手として活躍し、阪神のスカウトを務めた経験もある野球評論家・中尾孝義氏が“超サプライズ指名”の背景を読み解く。

「驚きました。近年のドラフト会議は、対象となる学生にプロ志望届の提出が義務付けられたりして、“隠し玉”や“密約”が影を潜めていました。これほどのサプライズは、花巻東高から直接米球界入りするつもりだった大谷翔平投手を日本ハムが強行指名した時(2012年)以来ではないでしょうか」と中尾氏は感嘆する。

 今後、佐々木とソフトバンクの交渉・契約が可能になるのは、来年5月の大学リーグ戦終了後。同7月のMLBドラフトでも指名され、両にらみの入団交渉となる可能性もある。こうした状況から、今年のドラフトで佐々木が指名されるとしても、リスクの低い下位だろうと予想されていたが、ふたを開けてみれば、まさかの1位重複だった。

「来年5月まで入団交渉ができないだけでも、指名する球団にとって大きなマイナスポイントです」。しかし、大きなリスクと手間をかけてでも、佐々木が求められる背景もある。今年のドラフトは多くのスカウトの間で、“不作”の部類に入ると言われていた。中尾氏は「年々プロとアマチュアのレベルの差が広がり、ごく少数の飛びぬけた選手以外は、1年目から活躍するのが難しくなっている印象です。特に打者は、プロの投手のスピード、変化球のキレに慣れるのに時間がかかります」と分析。そんな中で、佐々木の存在価値はますます上がっていったようだ。

交渉期限は来年7月末「素質を持った選手であることは間違いない」

 しかも今オフには、2022年3冠王のヤクルト・村上宗隆内野手と、本塁打王3回の巨人・岡本和真内野手がそろってポスティングシステムを利用しメジャーへ移籍することが確実。日本球界からファンに夢を与える長距離砲2人が同時に消えるわけで、後継者の育成は急務と言える。

 中尾氏は「その点、佐々木はパンチ力がありますし、ミートもうまい。プロの世界にどれだけ順応できるかは未知数ですが、長距離砲の素質を持った選手であることは間違いありません」とうなずく。

 佐々木とソフトバンクの交渉期限は来年7月末。異例の“ロングラン”となりそうな交渉の行方に、日本球界全体から熱い視線が注がれる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY